そんなことしてる場合じゃない

 弦楽器奏者にマスクをさせて、アクリル板を立てて、フルート奏者の汚い唾からセカンドバイオリンのお姉さんを守り、客席はヒソヒソ話ができないように一人置き。が、「新しい生活様式」なの?

 クソ真面目に、フルート奏者の飛沫の飛ぶ範囲なんてレーザー使って調べてるんだって。そのうち、オーケストラではフルート奏者は後ろ向きで座ることになるぞ。金管の連中の唾抜きの方がよっぽど「えんがちょ」なのにな。

 そんなことより、客が半分しか入らないんだから、チケット倍額にしてみたらどうよ。客とオケとで我慢比べしたらいい。どっちが先に「勘弁してくれ!」って言うかね、興味深いね。いくら新しい生活様式ったって、オケの人数もホールのキャパも変わらないんだから、そうするっきゃないでしょ。ま、「今でも半分も入っていないんだから、バラバラに座ればいいだけじゃん」っていう皮肉は止めとこうね。

 飛沫の距離を地道に測っているスキに、おそらく、音楽はストリーミングに流れていくんじゃないか。帝王カラヤンが円盤で荒稼ぎした時と同じように、きっと、ストリーミングで荒稼ぎする次代の帝王が現れるね。4Kハイレゾで大画面ディスプレイで文句ある?「音楽は生じゃなきゃ」なんてよく言うよ。ベルリンフィル生で聴いたことのある人、世界に一体どんだけ居るんだ?

 な、今のうちに言っておくぞ。生のコンサートは倍額出しても聴けんようになるぞ。しかも、聴けるのはネットで成功をおさめた奴のものだ。デジタルなんてやりたい放題だから。エフェクトはかけるわ、間違いはなおすわ、音程も、テンポもやりたい放題。だから、倍額出して生音聴いても、素晴らしい音楽に感動できるとは限らないから。

 かなり前に、「音楽と人はぴったりとよりそってこそ」みたいなこと書いたけど、終わったよ。だって、それ、いまいちばんヤバいもん。だから、かなりの確率で音楽はつまらなくなる! 

 でもね、きっと、あのディスプレイを突き破って、その向こう側から、否応なしに心を掴みに来る音楽家が出てくるよ。

きょうはここまでだ。