凄いな、知ってるか? 桜の開花時期が簡単に調整できるようになったらしいぞ。温度と日照時間の調整、そしてある種の成長ホルモンとの併用で、任意の時期に開花させる。前年の初冬から桜の樹を簡易テントで覆い、温度管理をする。そして、どういうやり方かは知らないが、成長ホルモンも必要なんだとか。
これによって、お花見目当ての訪日客に、ピンポイントで満開の桜を見てもらえるようになるので、観光業界としてはもろ手を挙げての大歓迎だそうな。訪日客、2030年4000万人を目標に掲げる観光庁もこれにはかなり期待しているらしい。まずは各自治体で協議して、開花の時期をずらして日本全国3月の中旬から5月まで桜を楽しむことができるようにする。桜の咲いていない、あるいは終わってしまった時の「桜祭り」見たいな恥ずかしいイベントは無くなるわけだな。それから、小学校や中学校は、入学式に合わせて満開の桜にすることができるようになるらしい。
けれどもこのやり方だと、花の付き具合が約2割減って少し見栄えが悪いので、桜のトンネルみたいな名物にするには、その分、樹の本数を増やさなければならない。また、色づきも今までのように今年は白いのかな、ピンクが濃いのかななんて楽しみは無く、毎回ほとんど白に咲くんだそうな。
科学の力は未だ絶大で、向かうところ敵なしのようだな。そもそも、科学と対極を成すものの概念自体が無くなってしまった。絶対にして唯一の価値観になりつつある。フルトヴェングラーのように宗教とまでは言わないけどね。
でも、これで皆黙ってるのかなぁ。桜って、微妙な気温変化で、いつ咲くかぎりぎりまでわからない。そして咲く時はその地域で一斉に咲く。それがイイんじゃないのか? 満開の桜に期待して計画した旅行、外れるのもまた楽しからずやじゃないのか? あるいは、偶然通りがかった満開の桜に、思わず足を止めるのも、幸運を得たようで楽しいはず。花の色にしても、何時だって、どこへ行ったって同じじゃ、そのうち誰も桜にワクワクしなくなると思うんだが。
この話、考えようによっちゃ、円盤主義のマエストロによく似てるよな。何時でも好きな時に楽しめる桜。見栄えを良くするために増やされた樹の数。何時でも同じ色の桜、こちらの都合に合わせて咲かせることができる桜。ワクワクしない桜。
俺は嫌だね。
きょうはここまでだ。