この「癖」の項目で最初は、各々の「たぶん良くないと考えられる」吹き方の特徴について述べた。なぜ「たぶん」という断りを入れるかと言えば、それらは他人が(先生といえども)「100%直すべき」と断言できない質のものだからだ。結果に至らなければ、それが間違っていたのかの証明はできない。しかしな、結果が出てからの後戻りもできない。人生と同じだな。親や先生の話をどこまで聞くかって話だ。俺は、ほとんど聞かなかった。だから・・・
さて、その「癖」は個別のものだけではなく、人間の持つある種の特性としても存在する。演奏者として、あるいは学習者として、それを意識に上らせることは、全体の発展に与することになるだろう。その一部として、リズムについて例を挙げた。きょうはまとめとして、まずいくつかの注意すべき点を挙げてみよう。
★長い音符はより長く、短い音符はより短くなる傾向がある。例えば、小さい音価で構成されたパッセージに続く大きい音価によるパッセージは、確実にテンポが落ちてしまう。
★「歌う」とテンポは遅くなる。「歌う」という事についてはいずれ項目を立てて書くつもりだが、そもそも「歌う」ことに内包されている要素、「立ち止まる」「訴える」などによって、推進力は失われる。
ふたつを思いつくままに書いたが、ハンス・ペーター・シュミッツ博士はその著書「演奏の原理」の中で、これらを明快に解説している。氏はその中で演奏上の様々な要素を、二つのグループに分ける。右のグループは、「明」のグループだ。例えば、速い、強い、短い、高い、固い、だんだん早く、だんだん強く等だ。左のグループは、「暗」で、遅い、弱い、長い、低い、柔らかい、だんだん遅く、だんだん弱く等だ。これらの要素は、互いにそれぞれのグループの中で、影響しあっている。例えば、「下降の音階はだんだん遅くなったり、弱くなったりする傾向がある」、あるいは「ディミヌエンドはだんだん遅くなる傾向がある」と解釈できる。しかしそこで、単純に「だから気を付けろ」と氏は言っていない。「ある局面で現れる弱点を、反対のグループの長所によって補完させる」事が、「演奏の原理」だと述べている。・・・先生!許して!まとめちゃいましたから。
例えば、下降の旋律は、クレシェンドと組み合わせると、弱くなっていく印象を防ぐことができるだろう。(もちろん必要なら、だ。)同時に、下降の旋律にディミヌエンドを組み合わせれば、その印象はより強いものとなるだろう。高音域で「歌う」なら、音は大きくないほうが良いだろう。印象が台無しになるからな。
こうしてみると「個性」とか「創造性」は究極の「癖」に他ならないと考えられる。「癖」は単純に直すべきものではなく、「人間」そのもの、「音楽」そのものと考えたほうがいいかもしれない。それに気が付きさえすれば、直すのも楽しく、利用するのもまた楽しいものだ。
モーツァルトのモーツァルトたる要素は、器楽的なアレグロの楽章に「歌う」要素を採り入れた、(Singen des Allegro)と言われる。うん。
きょうはここまでだ。
本ご講義を参考に勉強させていただいています。
これまで断続的ですが、約10年間二人の先生に習い、日々、40分程度練習しておりますが、多くの悩みを抱えており、先生のご講義で理屈的に納得でき精進しているところです。
さて、中でも当面する大きな問題が、「震え」が生じてしまうことです。 先生からは、「下くちびるをしっかりフルートに押し付けてみて」とか、逆に「できるだけフルートから唇を離して」とかご教示うけますが、いずれも「低音時にタンギングが出来なくなる」などうまくいきません。
つきましては、お忙しいところ恐縮ですが、
「自宅での練習で誰が聞いているわけでもないのに震えが生じる」
ということに解決策をご教示いただきたくお願い申し上げます。
お読みくださって、誠にありがとうございます。
「震え」が生じてしまうとの事、さぞお困りのことと思います。ご質問に対し、きょうのところは、勝手に「低音域を吹こうとすると、唇が震えてしまう」という解釈でお答えさせていただきます。もし違うようでしたら、ご遠慮なく再度お尋ねください。
私の考えでは、フルートをしっかり唇に押し付けるのは間違いだと思います。フルート無しで、唇の真ん中に小さな1ミリ程度の穴を作ってみてください。その小さな穴から息を出しながら、下唇の真ん中をちょっとだけ押してみてください。あっという間に穴が大きくなってしまうでしょう?歌口を唇に押し付けるという事は、そういう力が働くという事です。ですから、その力に逆らって小さな穴の状態を維持しようとすれば、相当に余計な力を必要とするでしょう。
唇が震えるという事は、歌口に下唇が接触しているか、あるいはしっかりと押し付けられているのかにかかわらず、唇で小さな穴を作ってそこから息を出すのに必要な唇の圧力が不足しているのではないでしょうか。唇に入れる力は、強すぎてはいけませんが、息の圧力とスピードに見合った最低限の力は必要です。また、特に低音域では息のスピードを遅くしようとして、唇の力が抜けすぎることが良くあります。このような場合、息の穴がとても大きくなっているので、低音のロングトーンをやってみると、極端に息が続かないのですぐにわかります。理屈で恐縮ですが、同じ大きさの穴で吹くとすれば、スピードの遅い低音域の方がローグトーンは長く続くはずです。低音域でも、なるべく小さな穴で、息のスピードをあまり落とさずに吹けるようにすると良いと思います。低音域の音色の変化、つまり倍音の多寡の調節にもこの穴のコントロールは必須です。
こんな練習をしてみてください。
なるべく細いストローを1本用意してください。これを、唇の真ん中にセットして唇を閉じます。咥えるというより唇のど真ん中に軽くセットする感じです。この時、口全体で挟むのではなく、なるべく上下の唇の真ん中の部分の筋肉だけを使って、指でつまむような感じでストローを挟んでください。そして、ストローから息を出してみてください。必ずお腹の息を使ってください。この時の、お腹の状態、唇の力の入れ具合をよく感じてください。つまり、そのストローの穴の大きさで、そのスピードの息を出し続けるためには、その力の配分が必要になるという事です。息のスピードを変えてみてください。スピードが速くなれば唇の力は少しだけ増すはずです。次に、ストローから息を出し続けながら、そのストローを手でさっと引き抜いてください。これが、ちょうどよいお腹の息の支えと唇の力のバランスです。この状態でフルートが吹ければ良いのですが、残念ながら、フルートにはもっと小さな穴が適しているようです。鏡を見ながら息の穴の大きさを小さく、ある時は大きくしてみてください。さらに、穴の大きさを変えずに息のスピードを変化させてみてください。(鏡には20センチくらいまで近づいた方が良いでしょう)この練習をすることによって、唇の状態をコントロールできるようになると、たぶん・・・震えが収まると良いのですが。
唇の準備ができたら、楽器を当ててみてください。この時、折角鏡の前で作り上げたアンブシュアが壊れてしまわないように。下唇に当てられた楽器になるべく邪魔されないようにアンブシュアを維持してみてください。楽器が下唇に触れていても、下唇の自由が失われないように!
この回答はもしかすると、貴殿にとって「とんちんかん」かもしれません。どうぞご遠慮なく「いや、そうじゃないんだ!」と仰ってください。一緒に考えましょう。
お忙しいのに早速のご返事をいただきましてありがとうございます。 こんなに早いご返事いただけてことに感激です。
しかも、各index拝見しておりますが、荒々しいご教示(文面)にたいして、今回、優しく、ご丁寧な、そして詳細にわたってのご教示をありがとうございます。
確かに、下くちびるにフルートを歌口を押しつけてということでは息の出方に疑問を感じておりました。また、仰せの通り、確かに、吹きこむ息にたいして、唇が、フルートから唇への吹き戻しというか、何か負けてしまっていることで震えが生じているような印象をも感じておりました。 (とりあえず一部の所感ですが)
早速、ご指導内容についてさらに熟読し、ストローの利用等により、まずは震えが収まり、鳴るような音を実現していきたいと思います。
ありがとうございました。 とりあえず御礼まで。
お役に立てればうれしい限りです。何時でも結構ですから、経過や、結果をお知らせくださると幸いです。私自身の勉強になるので。
大変時間を費やしてしまいましたが、中間報告をさせていただきます。
結論から言いますと「震えは止まらない」ということです。
教室で、先生にも相談しながらいろいろ試していますが、頭部管のを外して頭部管の差し込み口を縦に、つまりペットボトルの口を瓶の口代わりに吹いてみると震えなく音を出せますが、フルートのリッププレートに当てて吹くとてきめんに震えが生じてしまいます。
自分では特に意識していないつもりであり、自宅の部屋で、誰も聞いていない時でも、リッププレートに当てて吹き始まったとたんに震えが生じてしまいます。 確か、10数年前の習い始め頃には無かったことが生じております。 確かに、「上がり症」の傾向は性格的に持っており、やはり精神的なものとしか思えません。
しかしながら、上がり症、あるいは普通にロングトーンあるいは曲を吹こうとするときに震えが生じてしまう精神性?を持っていたとしても、それでもふるえず吹ける方法は無いものでしょうか。
面倒くさい相談を申し上げており、「どうしようもない」と思われることとおもいますが、もし、なにか、方法についてチャレンジのヒントがあるようでしたらご教示いただきたくよろしくお願い申し上げます。
なお、震えに関して
(1).ロングトーンではなく、「フ―と一息で吹く」場合は、当然ですが、震えは発生しません。
(2).曲を「全てスタッカートで吹く」のも、当然、震えは発生しません。
(3)..また、下くちびるのしたのくぼみにフルートをかなり強く当てて吹く時も震えは生じません。ただ、この場合、特に低音を出すときにタンギングが出来にくくなってしまいます。
(4).曲を吹くのに、八文音符、四分音符2つくらいであれば、震えなしでタンギングはできるが、それを超えると息が続かない。 タンギング無しのスラーであれば八文音符8個くらいまでは震え無しで吹ける。
といった状況です。
これらから判断すると、「息が続かない」といったことも感じられます。
いろいろすみません。 なお、65歳です。
経過をご投稿頂きありがとうございます。お困りのご様子、胸が痛みます。恐らくは、口の周りの筋肉の使い方が、うまくいっていないのでしょう。口の周りには、数多くの筋肉があって、どれもが随意的に動かせるわけではなく、これらのコントロールには、色々なイメージを持って口の形を考えるしかありません。たとえば、ピューピューという時の口とか、スイカの種を唇から飛ばす時の口とかいった具合です。こういったアドヴァイスは、実際のレッスンで一緒に試し、考えながらでないと、なかなか的確にはできないことと思います。今回記して頂いた事から察するに、かなり息の穴が(アパチュア)が大きくなっていると思われます。息が続かない事から判ります。一度フルート無しで、鏡の前で(20センチくらいに近づいて)理想的と思われるアムブシュアを作って見てください。息の穴は左右2ミリ位まで、高さは1ミリ位までにできたら、息をそっと出して見てください。震えますか?震えなかったら、口や息の圧力や方向を全く変えずに、その息の流れの中に楽器を持っていって、音の出るところに楽器の位置を定めてください。楽器に息を吹き込むのではなく、息の流れの中に楽器を持っていくのです。
どちらにお住まいですか?もしお近くでしたら、今の先生に内緒で、無料体験レッスンにいらして見ては如何ですか? その方が、的確なアドヴァイスを差し上げられると思います。精神的な原因では無いと思いますし、ましてや年齢の問題でもありません。同い年ですよ、私と。
岩村 隆二 様
震えの矯正について殆ど諦め、この際フルートも終わりにしようかとという思いも脳裏をよぎる日々の今日でしたが、貴重な時間を費やしご返事、ご指導をいただきありがとうございます。大変恐縮です。
アパチュアの大きさ等、岩村先生のHPを拝見しながら、また、これまでのご指導に沿って行っているつもりでおり、まず細い息を出してそこにリッププレートを近づけ音になるのを確認して、下唇に触れるような取り組みをかなり?行いましたが、やはり、唇にリッププレートが触れると震えが始まり、さらに「ワナワナ」とおびえてるかのように震えが大きくなってしまいます。
結局のところ、岩村先生のご指導の通り行えてないのだと思います。
「不思議ですね・・・・。」と教室の先生をも困らせてしまっています。 震えを無くすために昨年4月から通い始めた教室ですが、9月末でお休みをいただくことにした次第です。
さて、今回、岩村先生より暖かいレッスン実施のお話をいただきましたが、できましたら是非お伺いし「震えSTOP]につながるご指導いただけたけたら幸いと存じます。
小生、福島県郡山市在住です。 先生の教室が東京等近辺でしたら、9月早々にお伺いさせていただきたいと思います。 勝手ではありますが、ご都合等お伺いしたくよろしくお願い申し上げます。
返信ありがとうございます。郡山ですか。ちょっと遠いですね。当レッスンスタジオは東京・赤坂にあります。もし、こちらへお出かけのご用事があれば、ついでにお越しくださればと思います。
お手数ですが、上のバナー(STUDIO CAPITO)をクリックしていただいて、その中の「無料体験レッスン」からご希望の日時などをお知らせください。問題を解決して、楽しくフルートが吹けるようになればと願っています。
岩村 隆二 様
おはようございます。
赤坂でしたら、遠くありません。 是非、時間を取ってご指導いただけたらと思います。
新宿へ行く予定もありますので、ご案内いただきました通り、別途、日程調整の上、日時を希望させていただきます。
ありがとうございます。
とりあえず。
宗像