フルートの選び方・・・(1)

4月になったからな、新たにフルートを始める人、あるいはステップアップで、もうちょいいい楽器を手に入れようとしている人・・・結構たくさんいると思うのでちょっと書いておく。

これから色々詳しく書いていくつもりだけど、これだけは最初にはっきり言ってしまう。フレンチモデル(リングキイ)は絶対に止めとけ。現代音楽を沢山やるつもりなの?四分音吹かなきゃならないの?グリッサンドやりたいの?そうじゃないなら止めとけって。四分音にしたって、グリッサンドにしたって全部の音域でできるわけじゃないぞ。いや、できる音の方が少ない。作曲家だって、その辺のことを知っていて、使えるから、使えるところに、使っているだけだ。純粋に音楽的な動機、必然的な欲求で四分音やグリッサンドを書いているわけじゃない。作曲家からの、そもそも、その程度の要求なんだから、これらの四分音やグリッサンドは、カバードキイでも技術を駆使すれば演奏可能な範囲だ。

とある大メーカーのHPにこんな記述を見つけた。「キイの真ん中の穴をきちんと押さえないと音が出ないから、フルートを綺麗に持つようになり、指が早く回るようになります」だって? 大嘘! フレンチモデルの高価なフルートを持って、私のところにレッスン受けに来た何人ものフルート愛好家のうち、正しくフルートを持てていた人は、10人にひとりもいなかった。殆どの人は、薬指のキイがうまく押さえられずに詰め物をして使っていたか、あるいは使わざるを得なかった。無理して押さえているために、右手の薬指や中指がトリルキイに触れてしまったり、右手小指の動作が全く自由にならずに苦しんでいた。そうまでしてリングキイを使わなくちゃならない理由は何なの? 詰め物すると音程も鳴りも確実に悪くなるんだぞ。それから、シリコンなんかの詰め物してると、安っぽい音になってしまう。

今、シリコンの詰め物している人が居たら、コルクに変えてごらん。音が変わるから。コルクが無いって? ワイン飲めよ、高級なやつな。安物だとコルクの質も悪いからな。音が良くなって、うまいワインが飲めるんならいい話じゃないか。そのコルクをカミソリで3~5ミリ厚に切って、穴の大きさに合わせて丁寧に切るんだ。酔っぱらってやると手を切るぞ、醒めてからやるんだ。

多くの場合、フレンチモデルにするのは、初心者用のフルートを使っていて、ある程度上達して、じゃあってんで、2本目は総銀かなんかで、フレンチモデルを選択なんてことが多いと思う。せっかく、せっかく、いい音も出せるようになって、吹き方も安定してきて、指の練習もこれからは捗るだろうという時に、フレンチモデルにして行き詰ってしまう。もったいないねぇ。高い楽器だから、「あ、しまった!」と思ってもそうそう買い替えられないよな。上手くいかない可能性が高いのに、それを先生が薦めたとしたらこれは罪が多いと思うね。先生も詰め物して吹いてたらそれこそ笑い話だ。

非難だけじゃどっかの野党みたいだから、カヴァードキイの利点を書いておく。
きちんと調整されていれば、リングキイよりも良く鳴る、しかも均質の音色でだ。だって、穴の開いているキイや開いてないキイが混ざっているわけじゃないからね。それは、美しいレガートに繋がる。3オクターブ目での音が安定しているので、足部管をH管にする必要がない。つまり、楽器全体は軽くなるし、持った時に右手の方が重くて下がってしまうことがない。これは、歌口を必要以上に唇に押し付けることを防ぐことにもなる。考えてみてくれ、バランスの悪い楽器で1時間練習した後の疲労度を。それを続けたときの悪影響を。某メーカーは一時期、リングキイーのタンポ抑えの金具が使っているうちに落ちてしまうという、重大な欠陥商品を作っていた。こんなの車なら即リコールもんだが。カヴァードキイはほとんど全部ネジ止めなんでそういう心配は無いだろう。よく言われるフレンチモデルでの「音の抜け」は、別の見方をすれば「放散する音」でもある。しっとりと、安定した、暖かい、柔らかい音を求めるなら、カヴァードの方が上だ。

繰り返し言っておこう。「カッコいいから」くらいの理由でフレンチモデルにしたら後悔するぞ。フレンチモデル持ってたって、上級者には見えない。特に、指の細い女性には、私は絶対勧めない。どーーーーしても、欲しいって言うんなら、1か月くらい貸してくれる人を探すんだ。高い買い物をするなら、その前にそれだけの労力をかけるのはあたり前だろ?

きょうはここまでだ。