メンテナンス
フルートの簡単なメンテナンス(基本の基本)
調子が悪いと思ったらここをチェックしよう~修理に出す前に自分でできること
1 頭部管のチェックポイントと調整方法
ヘッドスクリュー
このあたりから、カチャカチャ音がしたら調整をしましょう。ヘッドスクリューは管体にぴったり付いていて簡単に廻ってしまわないように。反射板の調整をしながら良い状態を見つけてください。
反射板の調整
掃除棒の一端にはラインが入っています。このラインは端から17mmの所にあり、この長さは歌口中央の管の直径となっています。 この掃除棒を頭部管に差し入れて、このようにラインがど真ん中に来るように調節します。ラインが右、つまり反射板が歌口に近すぎる場合は、ヘッドスクリューを、ラインがちょうど良い所に来るまで時計方向に回します。逆にラインが左に来ている場合は、ヘッドスクリューを緩め、ヘッドスクリューをぎゅっと押してやります。コツはラインがわずかに右に来るまで押してやり、最後にヘッドスクリューを時計方向に回して、ちょうど良い位置まで戻してやります。こうすることによって、ヘッドスクリューが管体に密着し、緩んでしまうことを防ぎます。
反射板の清掃・ヘッドコルクの調整
ヘッドスクリュー、ヘッドコルク、反射板はこのような構造、関係になっています。反射板やコルクを抜くためには、ヘッドスクリューを緩めては押し、緩めては押しを繰り返し、スクリューがねじからはずれたら、ねじを木の棒などで押してやります。(胴体方向へ抜くんですよ、頭部管には絞りがありますから)このとき、絶対に管体を傷つけないように。 こんな風になっているのが正常なかたちです。右側が反射板です。両側の金属板がきちんとコルクを挟んでいるように。もし緩みがあったら左側の金属板にナットが付いていますから、適度に締めてやります。 こんな風に緩んでいたら異常です。また、緩んでいなくても、劣化によってコルクが小さくなってしまっている場合があります。反射板がすぐに動いてしまうようなときは、修理を依頼してコルクを換えましょう。応急的には、コルクを熱湯につけるとか、フライパンで焦げないように炙るなんて事をしますが・・・換えてしまう方をお奨めします。 反射板です。掃除棒では完全にきれいにはできません。私は定期的にここをきれいに磨きます。喫煙者のフルートは、たいていここにヤニがべっとりと付いています。ヤニと埃で全く響かなくなっている楽器を見たことがあります。
歌口の手入れ
ここをきれいにしない人が意外に多い。拭いたことのない人は、すぐに綿棒でこすって見ましょう。真っ黒のはずです。カドに口紅がこびりついて固まっている美女の楽器を見たことがあります
ジョイント部の手入れ
この部分の汚れには常に気を配りましょう。大きな擦り傷があったら、それは埃と一緒にズリズリと楽器を組み立ててしまった証拠です。それだけなら問題ではないけれど、抜けなくなったり、管が変形することもあるので注意しましょう。先端がはっきり丸まっていたら、すぐに修理に出しましょう。これは響きにかなり影響します。組み立てるときに、斜めに胴体につっこまないことです。
2 胴・足部管のチェックポイントと調整方法
胴・足部管の調整の多くは、分解を必要とします。楽器を一本だめにするつもりで分解するなら、それなりに学ぶことは多いけど。私は絶対に勧めない。分解しないでできるチェックは、芯金とバネくらいのものです。でも、知らないとつまらないことで修理に出さなきゃならないからね。
芯金の突出
管体からポストが立ち上がり、それに芯金(縦のパイプ)がねじ止めされ、このパイプにキイが蝋付けされています。このねじが、使っているうちに緩んで、このように飛び出してくることがあります。フルート全体で3~5カ所。
この飛び出したねじをそっと締めてやりましょう。力を入れすぎないように細心の注意を払います。ドライバを使うときには、他の部分、特にタンポに傷を付けないように。ねじは、短いものから長いものまで色々入っていますが、この小さなねじは紛失すると厄介です。滅多に緩むことはないと思いますが、楽器を拭くときにでもチェックしましょう。 ポストの丸い玉の中にきっちりとねじ山がおさまっているところ。軽く締めただけなのに、キイが動かなくなったら、少し戻してやりますが、残念ながらそんな楽器はあまり良い楽器とは言えません。
バネ
バネは、このようにバネかけにかかっていて、キイを戻す力になっています。(いつも開いているキイと、しまっているキイがある)バネの材質は、ステンレスやホワイトゴール等ですが、稀に鋼鉄製のバネを用いているものもあります。鋼鉄製のバネは独特のタッチがあって良いのですが、錆びやすく、折れることがあります。バネかけの形状は、メーカーや、楽器のグレードによって、違いがあります。高級品ほどはずれにくくなっています。
これはバネかけにかかっているバネを後ろから見たところです。キイひとつひとつにバネが1本ずつ付いているので、よく観察してください。バネの付いている場所もキイに近かったり、遠かったりと・・・このバネが、ふとした拍子に、あるいは楽器を拭くときに布をひっかけて、あるいは楽器を落としてはずれることがあります。バネはポストに打ち込んでありますが、古い楽器だと抜け落ちてしまうこともあります。
これがバネがはずれている状態。バネかけという、ドライバーの先がふたつに分かれたような簡単な道具があれば良いのですが、無くても、ドライバーの先や、楊子の先(太い方)などを使って、簡単に戻せます。他の部分に傷を付けないように慎重にやりましょう。バネをあまり無理して曲げないように。バネの力は調節可能ですが、分解を必要とするので、バネが強すぎたり、弱すぎたりしたら、修理を依頼しましょう。