あけまして・・・(2)

 幼少のころにはまだ「数え年」の習慣が残っていた。いや、制度的には明治に廃止になったんだけどね、親やその上の世代は、「かぞえで○○歳」なんて言い方をしてたと記憶する。つまり、生まれたら1歳、お正月でプラス1だ。だから、12月31日に生まれたりするとあっという間に2歳になってしまうわけだな。そういうわけで、お正月には家族全員1歳ずつ歳を増やす。おせちを前に、家族全員で「あけましておめでとう!」

「おい。○○いくつになった?」

「はいお爺様、私は7歳になりました、お爺様は何歳になられましたか?」

「わしは69歳じゃ」

 いいねえ。ただ年号が増えて1月1日になったからって、たいして目出度くはないが、皆が無事に歳を増やすというのは目出度いの極みじゃないか。だいたいねぇ、0歳児なんて言い方気持ち悪くないか?「0」はゼロだ、「無」。せめて「当歳」とか「新歳」とか呼んでやったらどうなのよ。ちょっと馬みたいだけどな。

 だいたい、妊娠何か月って、あれ「かぞえ」だからな。お医者で「はい3か月です。」って言われて青くなるよね。いや、ならないか・・。ドイツにいた頃、ふとした話題で、動物の赤ちゃんがお母さんのお腹にいる期間の話になった。ある日本人学生が、不用意に「人間は10か月!」って言っちまった。反響が凄かったぞ。「わぁ!日本人は10か月もお腹にいるのか!」いや、マジでびっくりしてた。音楽学生同士の会話だから、ほとんどアホ村状態だな。

 で、坊主になった話から続くおじいちゃんの話だ。

 ひいおじいちゃんも実は海軍少将だった。だから、うちは代々海軍で、親父も海軍、自衛隊だった。ただ、親父は技術畑で潜水艦の燃料電池の研究をしてたらしい。でもね、戦前、戦中、戦後を軍人として過ごし、家族を養ってきた男だ。生前その胸中を一言も語らなかったけれど、いま、この歳になってみると、いかに立派な強い男であったかが解る。親不孝をしてきたから、心がひりひりと痛む。

あぁ、哀しくなってきた。きょうはここまでだ。