寄り道 伝説の写譜屋さん

昨日、手書きの譜面について少し書いた。歳がばれるからあまり書きたくないが、大学生の頃はまだコピー機は普及してなかった。だから、図書館で見つけた貴重な楽譜は写譜するしかなかった。会社などには、青焼きというコピーがあって、それで楽譜をコピーすると、紫外線のせいか、数カ月も持たなかった。真っ白になっちまうんだよ。それに、このコピー、仕上がりは濡れてたな。

写譜(手書き)の要点は、楽譜の読みやすさだ。音符ひとつひとつの高低や長さだけでなく、まとまった音符の読みやすさも重要だ。これは、前から書いてきた、楽譜の読み方と同じ理屈だ。そして、フレーズの見やすさと、改段、改頁の関係など、とても奥の深い世界だ。それは奏者のイマジネーションをも左右するほどだ。楽譜のソフトもかなりの性能を持つようになったので、スコアが打ち込んであれば、ポン!で一応パート譜が作れるようにはなった。しかし、これをプロの写譜屋さんの譜面と比べると、もう、ぜんぜんダメ。良い譜面というのは音楽そのもので、音楽のイメージを表現している。そう、楽譜から暖かい風が吹いてくるんだ。だから、このような時代になっても、音楽を次から次へと生産していかなければならない現場からは、手書きの譜面が無くなることは無い。まあ楽譜ソフトでも、時間をかけて成型すれば、売られている楽譜のようにきちんとしたものを作る事は出来るけど。暖かい風までは、どうかな。

で、写譜屋さんという職業がある。作曲家や、編曲家が書いたスコアをパート譜にする職業だ。スタジオ録音なんかでは、ギリギリに曲が仕上がってくることが多く、写譜屋さんが大活躍する。その仕事は、読みやすく書くだけでなく、速い、とにかく速い。で、伝説の写譜屋さんが登場だ。彼は、作曲家がスコアを書いているその向かい側から譜面を見て、書いていく先からそれをパート譜にしていったという。譜面台に楽譜を逆さまに立てて吹いてみるとその能力のすごさが良く分かる。

しかし、実はそんなことで驚いてはいられない。あのモーツァルトは、弦楽四重奏の楽譜を、スコアを書かずにいきなりパート譜から書き始めたという。えっ!!! 絶句!

写譜屋さんの書き方とは大分違うが、我々が手書きで譜面を書くときのコツを少し書いておく。好みの問題もあるので、ベストとは言えないが・・・
鉛筆で書く。HBでいい。譜頭(玉)は小さく書く、鉛筆の芯の太さくらいで充分、点、まん丸でいい。線間の音符は線に接しないように書く。譜尾は、原則1オクターブだが、いくらか長めのほうがいい。譜尾は、譜頭と接するか接しないかの地点から細く弱く書き、止めるところでしっかりと書く。クレシェンドで書く感じだ。譜尾と桁に定規は使わない。小節線と(デ)クレシェンドには使ってもよい。加線の上に出る音符は、加線から離して書く。(加線に接しない)どうだろう、これだけでだいぶ読みやすい譜面が書けるはずだ。

きょうはここまでだ。