脱線 うにクレソン

偉大なるJASRAC様のみか〇め料に腹を立てていたら、ふと、「うにクレソン」を思い出した。うにクレソンというのは、今では広島名物らしいけど、20年程前は「中ちゃん」名物だった。「中ちゃん」という店が、広島のどこにあるのか今ではさっぱりわからない。タクシー捕まえて、「トルコ女子寮!」って言うと「中ちゃん」の前に着いた。

広島のホールで演奏会があった。例によって、出待ちの馬鹿話で、本番後に行く店の話をしていた。「トルコ女子寮ね!」ってのが、近くにいた舞台スタッフに聞かれて、怪訝な顔をされた。慌てて、「中ちゃん」の話をしたら、「なんで、音楽の人は皆『中ちゃん、中ちゃん』って言うんですかねぇ」って不思議がってた。

中ちゃんという店は、小さくて汚い店だった。「お世辞にも奇麗じゃなかった」って、書いてもいいんだが、それでは、かえって失礼な気がする。働いているのは中ちゃんひとりだ。行ったときは満席だったが、中ちゃんが外にビールケースで即席の席を作ってくれた。鉄板焼きの店なんだが、何でもたっぷりのバターでササッと焼いてしまう。音楽家仲間に伝わっていた絶品「うにクレソン」他を注文した。他ってのがさっぱり記憶にない。驚きは飲み物だった。「そこ行って、自分で買って来い」って言う。角を曲がった数メートル先に、ビールの自動販売機があった。

料理はどれも、とにかく美味しかった。この食事の最中に、見るからにそれ系の、ふたりの強面のお兄さんがやってきた。中ちゃんとごそごそやってる。中ちゃんが、何やらお札を数えだした。結構な金額だった。みんな固まってた。ヤの字がみ〇じめ料取っているんだろう、というのが我々の推量であったが、競馬の飲み屋かもしれないし、借金の取り立てかもしれない・・・領収書の出るような金でないことは確かだった。とても安い料金の店だったから、一日の売り上げではとても賄いきれないような金額を支払うのを目にして、中ちゃんの、不愛想で無口な理由が、「飲み物なんか出してらんねぇ」理由が分かるような気がした。

「みかじ〇料」って言葉で、ふと、思い出した「うにクレソン」。検索かけてみたら、広島名物になっているんで感動した。中ちゃんは2011年に亡くなっていた。Mixiにスレッドが立っていて、亡くなった時の様子も解った。中ちゃんは、「うにクレソン」を残して逝った。今では広島名物の「うにクレソン」だ。すごいな。

折角、中ちゃんの業績を讃えたのだから、不愉快な話に戻すのは止める。ただ、何かを残す権利もそして義務も、常に私たち音楽愛好家の側にあるんだ、とでも言っておこうかな。

きょうはここまでだ。