先日挙げた6項目の息取りポイントと、短い息取りの方法で、多くの問題は解決できると思うが、それでもまだ課題は残る。この残った課題こそ息取りで苦労するところなので、それを説明できないとインチキと言われてもしょうがないな。渋々説明する。
ドアに鍵、窓にカーテンな。たとえば、ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」冒頭、フルートのソロ。これ、旋律的には息をとるところ無くは無いのだが、長ぁいスラーが付いていて、しかも、世界中のオーケストラでみんな一息で吹いているから、もしスラーをぶっち切って息を取ろうもんなら、指さされて笑いものになる。こういうのは練習するっきゃない。必要なのは、息の倹約と、タンク満タン状態での息のコントロールだ。よく冒頭のCis(ド#)、短く吹いてごまかしてるけどな。練習するっきゃないのは、そうしてもらうしかないんで、そうじゃないヤツな。エチュード系の16分音符が連続しているのとか、19世紀ヴィルトーゾ系の曲みたいなヤツだ。まず、基本的にやっちゃいけないのは、小節線の上で、テンポ止めてヒュッと息取る方法。エチュード系でよくある、2小節ごとに小節線の上でヒュッなんてやっちゃいかんぞ、絶対に! 確かに、小節線の上で息を取らなきゃならないことはある。エチュード系なんて、十六分音符のまま再現部に突っ込んでいくのなんか当たり前だからな。こういう場合は、リタルダンドをする。音符の間隔を少しずつ広げていって空いた所で息を取る。アーティキュレーションと組み合わせればよりやり易くなるはずだ。この時も、できることならアウフタクトにとれる音列を見つけ出して、その直前で取れればかなり素敵だ。繰り返しておく。「テンポを止めるな」「息取りを音楽の中に取り込め」だ。
それでも取れないときはどうするか。俺って親切だろ?ヴィルトーゾ系なんかで、「カッコイイ場面でリタルダンドなんか出来ません!」って、怒るなよ、確かにそうだ。じゃぁどうする? 答えは、音を省くか、音形を変える。それしかない。こうするとなんか「負けた」感無いか?だから言ったでしょ、「楽譜通り」に拘るとロクな事ないよって。心配すんな、誰も吹けないような書き方してある曲、山のようにあるから。変に誤魔化そうとして、聴いている人に違和感を感じさせてしまうより、そのスピード感なり、躍動感を感じてもらうほうが目的にかなってる。奏者がいくら全部の書かれている音を吹こうが、それだけで誰かが褒めてくれるわけじゃないもん。それでも、音全部吹かないと、作曲家に申し訳が立たんという場合は、しょうがねぇからこうしろ。皆さん大好きなカルメンファンタジーから、譜例挙げとく。注意してほしいのは、旋律線の谷底の直後であり(谷底はGis-ソ#)、それに続くA-ラへの装飾音E-Fis-Gis(ミ-ファ#-ソ)が、アウフタクトのように取れる地点で、細工が行われているところだ。この譜面、印刷で無責任な息取りマークが付いてる、これ、鵜呑みにしてこのままやろうとしたら、曲止まるか、しゃっくりみたいな息取りになるよな。息取り直前のGisなんか、まともに鳴らないだろ?
ひとつ大事なことを忘れていた。すまん。「長い音符の後だけど、息を取らないほうが良い」場合だ。その続きで「それでも、どうしても取りたいんだ!」場合の処理方法だ。明日にしようっと。
きょうの結論は、聴く人ファースト!だ。作曲家ファーストでも、俺様ファーストでもないの。
きょうはここまでだ。