フルートの吹き方 息の取り方(2)

「息取りって、そういうことよ。」ってのは、つまり、息を取るという動作は、「体が上に伸びる動作」と結びついている、ということだな。西洋音楽は、上下動の音楽、ま、踊りもそうだな。この、音楽上の上下動と、呼吸による上下動をうまくかみ合うように息を取るのが、最重要だ。西洋音楽と断りを入れたのは、例えば能だ。移動するときに、上下動を極力抑える。歩行による腰の上下を、膝で吸収する、だから、頭は上下しない。聞くところによると、中国の京劇も同じらしいな。ちょっと、話がそれるが、能の静止の姿勢は、ただ、がしっと動かないようにするんじゃなくて、前に行く力と、後ろへ引く力のバランスで静止する。これ、フルートの持ち方で「究極の安定はバランスだ」と言ったのと、ほぼ同じ考えだ。で、話を元に戻すけど、上下動を嫌う能で、呼吸をどうコントロールしているかは勉強不足で知らない。誰か知ってたら教えてくれ。

音楽上の上下動についてちょっと説明をしておく。1拍目はダウンで、ほぼ間違いない。(ほぼ、というのは例えばヘミオラの場合、2小節で3拍なので、2小節目の1拍目はダウンじゃない、ヘミオラの説明してると長くなるから、ググってみてくれ)同様に、明らかなアップは、アウフタクトだ。いや、「アウフタクト」ってドイツ語で「上向きの拍」って、そのものの意味だから。とりあえず、小節の最終拍としておいて間違いないだろう。ここで、注意しなければならないのは、表記される拍子、例えば4分の3とか、4分の4とか・・それによって、最終拍が決まっているわけではないということ。それは1小節をいくつに「とる」かによって決まってくる。4分の4を4つにとるのか、2つにとるのかによって、最終拍の位置は違ってくる。だから、音楽上の上下動は、拍節感によって変化する。指揮者が、4拍子を4つに振らずに、2つに振る事があるのは、単に省エネで楽しているわけじゃないのね。音楽が変わってくる、(と、少なくとも指揮者は思っているはず)。で、最終拍が持ち上がって、持ち上がってそこにあるのが小節線。だから、ここでは普通、息取れないのよ。よく、重心を下げて吹くなんて書いてる人がいるけど、それは、「重心高いままだと息取れないから」ってんなら、まあ正しいかも。ねぇ、重心上がったり下がったりした方が楽しいんじゃないか?音楽だもの。上下しなけりゃ踊れねぇじゃん。

息の取り方を書こうと思って、きょうはひとつだけ例を挙げた。まとめれば、音楽の上下動と、息取りの動作がかみ合うように息を取りましょうねってこと。しかし、息取りというのは、この例でも分かる通り、別の要素、拍節感なんかと密接に結びついている。決して、物理的、肉体的に説明しきれるものではないということを理解してくれ。

指揮の話をしたんでちょっと言っておきたいことがあるんだ。よく、指揮者の棒で、「はぁい、タクトが一番下に来た時に音を出しましょね!」なんて、言ってるよな。そんな難しいこと、皆よくできるな。感心するぜ。でもな、こんな風にしてみてくれ。フルート構えて音を出す用意しておく。誰かに、何か軽すぎないもの、鍵束なんかいいかな、ぽお~んと軽く下手投げでちょっと上向きに投げてもらうんだ。その鍵束が、床に着くと同時に音出してみようか。イェーイ!簡単だろ?つまりな、最下点を認識するためには、投げる瞬間の鍵束の初速、角度、床までの距離を認識しなけりゃならないのよ。だから、それがわかるようにタクトを振らなきゃならないんだ、指揮者は。いい加減な初速や角度から振ったり、いきなり上から振り下ろして、「合わねぇっ」て言ってる指揮者は、皆で相談してクビにしてもいいぞ。そういう風に振れないってのは、リズム感無いってことだから。最近の電子メトロノームも実は最悪なんだな。ピッだけだもん。使わないわけにはいかないんで、しかし、慣れるまで慎重にした方がいい。昔の振り子式は、振り子見てりゃ物理的な予測がつくし、リズムという「動き」を含んだ概念に合ってる。

難しくなっちまった。許してくれ。

きょうはここまでだ。