なんとなく持て。つまり、バランスをとって、曲芸師がおでこの上に色々なものを載せて見せるように、持つってわけだ。その時に、絶対必要なのが、昨日ヒントを出しておいた、重心を感じるということだ。3点でも4点でも、フルートをガッチリ支えたければ、この際重心はあまり関係がない。
その重心だが、フルートの重心には、長尺方向の重心と、回転軸方向の重心とを考えなければならない。(厳密には、重心という言葉はこの際適当ではないかもしれないが。)まず、フルートの頭部管の先端近くを左手の人差し指の上に乗せ、足部管の先端部分を右手の人差し指に乗せてみようか。そう、フルートはぐるっと回って、キイポストや、芯金のあたりの機械密集部分が下になるはずだ。つまり、フルートはいつもいつも、内側に回ろうとするんだな。つまり、吹いているうちに、どんどん下唇が歌口を覆っていく。だろ?高い音が出にくくなって、音程が下がって、苦しくなって・・・。この、回転を止めてやらなければならない。方法は後で述べる。
もうひとつ、長尺方向の重心だが、これは、楽器単体では一定しているものの、そのうえで動かす指の位置や、運指の状態によって、若干移動する。本来の重心を支点にしてシーソーの乗り手の重みが右手寄りになったり、左手寄りになったりということだ。この、移動する重心をいかに感じてやるかが、フルートを持つうえでの大事なポイントだ。ちなみに、私はカバードC管を吹いているが、このフルートの重心は、だいたいAキイ(左手中指の真下位)にある。そこで、ひとつ実験だ。口にフルートを当てずに、フルートは吹いているときの角度を保って、右手と左手だけでフルートを持ってみよう。指使いは、最低音のC(ド)にしてみようか。力、入れるなよ。指が赤くなったり、青くなったり、白くなったりしたら、アウトだぞ。フルート支えられるよな。左右の指全体でフルートの重みを感じてみよう。そうだよ、ふわっと力抜いて持ってないと判らないだろ?そうしたら、次に少しずつ指を動かしてみる。少しだだぞ、指は2.5ミリ上げれば十分なんだから。半音階で、上に行ってみるか。ゆっくり、バランスを取りながら、歌口が上下しないようにだ。おや、困ったな。2・3オクターブ目のC(ド)、Cis(ド#)、3オクターブ目のG(ソ)、Gis(ソ#)4オクターブ目のC(ド)、Cis(ド#)(・・そこまでやらんでもいいが)あたりで、なんともうまく支えられなくなるはずだ。じゃぁどうするか。ほんのわずかに、左手の人差し指に楽器を感じてみようか。うまくいいかなかったら、見えないくらいに左の手首を内側に入れてみてくれ。うまくいったか?この、わずかの重心移動を感じることが、フルートを支えるコツだ。パッセージが早くなればなるほど簡単に、これらの音を通過できるようになる。まるでフルートが宙に浮いている間に、次の運指に移っていくような感じだな。
どうだ?ふわっと持ててるか?今日はあえて、指や手の形に触れなかった。話の順序としては先にやっておくべきかもしれないが、正しく持つということが、単に指回りの良さのためだけではない、ということを言っておきたかったからだ。次回は、指や手の形について詳しく述べるつもりだ。すまん。これから楽しい料理の時間なんだ。