難しい指使いの練習方法(2)

 前回は、不具合部分の合理的解決について述べた。不具合の部分を特定し、どの部品がどのように動かないのかを分析するように勧めた。そして、特定の音を抜き出して「鎖」のように練習する方法を紹介した。その過程で重要なのは「観察」する事だ。コントロールできない指の動きがあったらよ〜く観察してみよう。頭部管を左の肩に担いで、指の動きを目視してみよう。ま、たいてい4と5の指だわな、言うことを聞かないのは。しょうがないんだよ、腱が1本になってるから他の指のようにはいかない。だからこそ、4と5の指には「最適のポジション」を与てやる必要がある。例えば右手。小指がつっぱらかっていないか?小指が逆反りになっていないか?小指が伸びていると、薬指も動かしづらいだろう。そうすると、問題なのは持ち方だ。今までに持ち方については動画をはじめ何回も述べてきたので、もし問題のある人はもう一度読み返してほしい。(この辺に書いてある。)そして左手、小指がキイから5センチも離れてはいないだろうねぇ。ねえ。ねえ。左手の人差し指の第1関節と第2関節の間で楽器をガッチリ持つなんてことを言ってるひとがいるけど、私は採用しない。楽器を唇に押しつける事になるからね。そうやって、原因を煮詰めていくと、指がうまく動かない→持ち方が悪い→フルートの組み立て方が悪い→姿勢が悪い→性格が悪い→親が悪い・・・なんて所に行き着いちゃうことがある。つまり、だんだん解決が難しい問題に遡っていってしまう。練習の質としてはだんだん「イヤ〜な」事に向かい合わなくちゃならなくなてくる。さぁ、ここが問題なんだよ。ここで勇気を持てるかどうかが上達できるかどうかの分かれ目だ。最初に言ったよな。「美味しい所だけ食べようとする奴は嫌いだ」ってね。2〜3本の指の動きを練習するなんて、実はたわいも無いことで、持ち方を改める、姿勢を改めるという時間のかかる練習こそ不味くて、面白くなくて、努力が必要で・・・そして、大人になればなるほどこういう不都合には目を瞑ってしまうんだ。ずいぶん前に書いた記憶があるのだが、私たちの練習において足りないものは、いつだって「勇気」なんだわ。
 ちょっと気恥ずかしいが、真に善い行いをしようとするなら、真に善い人にならなければならない、みたいな事を言っているわけだ。大好きなフルートのことなんだから、偽善的にうまく吹いても面白く無いよ。そして、話は元に戻る。ここ十年近く、ずぅっっっっっっと言ってきた事、良い音楽とは何なのか、良い音とは何なのか、なぜ音楽をするのか、そう言った問題に行き着いて、そこから自分自身で、「正しいフルートの吹き方」を見つけるしか無い。ネットを徘徊しても、多分、多分、美味しい話しか転がっていない。「こうすれば上手く吹けますよ」って美味しい話をつまみ食いしても、きっと真に上手くは吹けない、心は満たされない。もう一度おさらいしておこう。世界に暖かい風を吹かせるために、自分の息(生き)を最大の効率でフルートの音に変える。上達の秘訣だけではなく全ての答えはそこにある。
 ここまでで今日の分は おしまい にしようと思ってたのだけど、この手の話はきっとウケが悪いので、ここまで我慢して読んでくれた読者諸兄にささやかなTipsを捧げるとしよう。難しいところは何百回練習しても、何千回練習しても、やっぱり難しいんです。簡単に吹けるようになるまで練習しようなんて思っちゃいけません。難しい箇所に来たら、集中力が高まるように集中力の波を自分で作っておくんです。その波もゆったりと揺れを楽しめるような波を、演奏が始まる前から自分の中に作っておくんです。ヤバい箇所に来た時ちょうど集中力の頂点が来るように自分でコントロールするんです。難所が来たら、集中して、キリッと顔を引き締めて、目を開いて、腹に力を入れて、男の子になるんです。別に女の子でもいいけど。絶対に逃げない、諦めない、俺はやる!・・・それで絶対上手くいきますから。

今日はここまでだ。なんか、きょう、調子悪いや。

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