中級者向き、エチュードの吹き方(2)

 スタートのテンポ(しつこく言うが無理しない)を決めたら、まず一回チトテト吹いてみるか。引越しして、駅までの道を地図を見ながら歩いているわけだ。注意すべきは、周りの景色を覚えたり、曲がる角の目印を覚えたり、どんな店があるか探ったりと、なるべく視野を広くとって、「いずれは地図なしで歩く」事を念頭に置いておくことだ。暗譜で吹くという意味ではないが、吹いていて、この先の展開が頭の中に入っていないとまずい。吹いていて、「あっ!ここ間違えそう!、注意!」って思うところがあったら、止まって楽譜に印だ。散歩しながら犬が片足上げるようなもんだな。
 アーティキュレーションは全部無視でいい。ややスタカート気味に吹けば、何処でも息をとれるから、とりあえずは足りなくなったら取ればいい。最終的には息取りの工夫をしなけらばならず、これがもしかすると一番厄介だろう。曲によっては、十六分音符がずっと続いていて、「吹けるわけないじゃん!」みたいのがあるが、そんな曲だったとしても、ひとつの曲として吹き通されなければならないので、「テンポを止めてはいけない」という原則は守られなければならない。息取りのたびに、しかも小節線の上で、パタッと止まってヒュッって息とって、ハイ再開!なんてやったらいかんよ。アーティキュレーションを利用して息を取るか、リタルダンドで隙間を作って息を取るか、どうしようもなければ目立たないようにリズムを変えて息を取る。この辺りはかなりの経験を用する部分だな。先生と相談してくれ。間違ってもテンポを止めるなよ、心臓だからな、止まったら死ぬ。エチュードだからなんて言い訳はだめだ。テンポを速めるにしたがってこの息取りについての考察が大きな比重を占めてくるはずだ。
 初回のいわゆる譜読みとして吹いてみるのは一回だけにしよう。一回目でつっかえ、つっかえだったら、二回目をやってもいいが、一回目よりはテンポを必ず落とすこと。この一回目の練習で曲の大体の構造をつかんでおく。そして、重複部分をチェックして、無駄な練習を省けるようにしておくんだ。
 一番やってはいけない練習は、テキトーなテンポで頭から吹き始めて、つっかえては転び、起き上がってはまた転び、最後までたどり着いて溜息一発、ふぅ~っ。よし、根性!ってなもんでもう一回頭から・・・これ、絶対ダメ。「なんとなく練習して、なんとなく吹けるようになる」のは、初級者までだ。そう、アルテの第二巻くらいまでは、こういった「力ずく」で吹いちまうことができるかもしれない。でもあなたはもう中級者なんだから、合理的に練習しなくちゃ時間がいくらあっても足りない。ただでさえ、練習時間をやりくりしてフルートを吹いているんだから、秒単位で無駄を省くんだ。
 多くのエチュードは、後半が再現部だったりするので、すっぽりさらわなくても済む部分がある。そして、この時必要なのは、完全に同じなのか、ちょっとだけ違うのかを見極めておくことだ。つまり、「差分」を頭に入れておく。この「差分」を理解しておけば、「冷静に」楽譜に立ち向かえるだろう。メモを用意して、スタートしたテンポを書いておこう。間違えずに吹けたらメトロノームのテンポをひと目盛り上げてやる。最近のメトロノームはデジタルで目盛りがなく、1ずつ上がっていくが、1ずつ上げる必要は無い。メトロノームの目盛りはこうなっているから覚えておくとよい。40,42,44,46,48,50,52,54,59,58,60,63,66,69,72,76,80,84,88,92,96,100,104,108,112,116,120,126,132,138,144,152,160,168,176,184,192,200,208。40から60までが2ずつ、60から72までが3ずつ、72から120までが4ずつ、120から144までが6ずつ、144から208までが8ずつだ。あぁ、あの三角のメトロノーム懐かしいなあ。あれ、売ってるけど高いよな。音も断然あっちのゼンマイ式のほうが良かったな。難点は、左右が狂ってっ来る場合がって、そうすると下に薄い紙なんか敷いて調整したもんだ。余談ついでに、デジタルメトロノーム、1分間に何百って打てるから、すげえうるさいド速いテンポで練習する奴居たな。健康に悪いから止めといたほうがいいぞ、迷惑だしな。
 スタートのテンポを余裕で決めたら、吹いていてそんなに苦労はないはずだ、目が真っ赤になったり、肩が凝りまくったり、左の人差し指が痛くてどうしようもない、みたいにね。だから、よく耳を使って、「自分の音で吹けているか」に注力するのが大切だ。常に「指の練習じゃなくて、音の練習」だと自分に言い聞かせること。どんなに器楽的なフレーズでも「唄う」ように吹くこと。

 今日の部分をまとめておくと・・・
①最初のテンポで見栄を張らない。
②徹底的に合理化する。同じフレーズ・パッセージは2度吹かない。
③最終的にどこでどのように息を取るのか、考えながら練習する。
④音が自分の音でなかったら、即、止めて別の音の練習をする。
⑤どこか痛くなったり、青くなったり、赤くなったり、白くなったりしたら、そこの改善が先だ。

今日はここまでだ。    な、吹けるような気がしてきただろ?

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