音程をどうとるか…音階(1)

七面倒くさい話から始めなければならないので、ご容赦。
 まず大前提として、弦でも管でも膜でも振動して音が出りゃ倍音が出る。倍音って何かというと、元の振動数の整数倍の振動が元の音に乗っかって出ているってことだな。ここで「なんで?」って突っ込まないでほしい。この項を書くにあたって俺も調べたんだわ。でもどれを調べてもだな、「自然音には倍音が含まれています」「ある音を鳴らしたときに自然に発生します」って、当たり前みたいに書いてあるのよ。とりあえず信じるしか方法は無いようなので、納得できないが話を先に進める。
 整数倍と書いたが、2倍の振動数はオクターブだ。3倍はというとその上の完全5度。4倍は2倍の2倍だから2オクターブ上。5倍はその上の長3度、6倍は3倍の2倍だからその上の完全5度。余談だが、7倍はちょっと特殊でこれを短7度と言うかといえば、それよりもかなり低めの7度で、自然7度などと呼ばれている。最初の音をドとすれば、2倍もド。3倍がソ、4倍ド、5倍ミ、6倍ソ、(7倍シb)だな。これ位までならフルートで吹ける。最低音のドの指使いで息のスピードを上げていけば、第3オクターブのシbまでは簡単に鳴らせるだろう。第3倍音のソはちょっと鳴らしにくいかもしれんが。ここまではいわゆる「倍音列」の話で、原則的にはその比が単純であるほどよく調和する。

 次に、真ん中のドから出発して振動数比3:2の純正5度を重ねていくとする。~いわゆる5度圏~(便宜上音名を挙げていくと、ド・ソ・レ・ラ・ミ・シ・ファ#・ド#・ソ#・レ#・ラ#・ミ#・シ#)と12回積みあがると、7オクターブ上昇してシ#、つまり異名同音のドに至る。これを算術的に表現するとこの時のシ#の振動数は最初の5度の
\[\left(\displaystyle\frac{3}{2}\right)^{12}=129.746337890625\]倍である。同時に、最初のドの正確な7オクターブ上なので
\[\left(\displaystyle\frac{2}{1}\right)^7=128\] というわけで、完全5度を何回重ねても最初のドの整数倍の正しいオクターブには到達しない。これは何も5度に限ったことではなく振動数比5:4の長3度を3回重ねると平均律ではオクターブになるはずだが、\[\left(\displaystyle\frac{5}{4}\right)^{3}=1.953125\]で2にならない。同じく振動数比6:5の短3度を4回重ねると\[\left(\displaystyle\frac{6}{5}\right)^{4}=2.0736\]だ。
 これが何を意味するのかと言えば、「純粋な和声を追求すると音楽はあっという間に破綻する。」ということだ。ここで言う音楽とは「和音和声的西洋音楽」と言う意味においてだという注釈をつけておく。こんなことやってると、身が持たんのです。どこかで誤魔化すしかないんです。

 ちなみに、オクターブの振動数を単純な整数比で分割していくと、次のようになる。まず、振動数比2:1のオクターブを5度(3:2)と4度(4:3)という二つの音程に分割する。次に、その5度を長3度(5:4)と短3度(6:5)に分割する。(そしてその長3度を大全音(9:8)と小全音(10:9)に、短3度を大全音(9:8)と大半音(16:15)に(に分割する。さらに小全音を大半音(16:15)と小半音(25:24)に)に分割する。これらの音程は実はオクターブの内部を分割するときに、もっとも単純な比(\(\left(\displaystyle\frac{n+1}{n}\right)\)、すべて2,3,5を用いて表されている)で分割した結果である。

octave(2:1)完全5度(3:2)
完全4度(4:3)
\[\left(\displaystyle\frac{5}{4}\right)\times\left(\displaystyle\frac{6}{5}\right)=\left(\displaystyle\frac{3}{2}\right)\]
完全5度(3:2)長3度(5:4)
短3度(6:5)
\[\left(\displaystyle\frac{5}{4}\right)\times\left(\displaystyle\frac{6}{5}\right)=\left(\displaystyle\frac{3}{2}\right)\]
長3度(5:4)大全音(9:8)
小全音(10:9)
\[\left(\displaystyle\frac{9}{8}\right)\times\left(\displaystyle\frac{10}{9}\right)=\left(\displaystyle\frac{5}{4}\right)\]
短3度(6:5)大全音(9:8)
大半音(16:15)
\[\left(\displaystyle\frac{9}{8}\right)\times\left(\displaystyle\frac{16}{15}\right)=\left(\displaystyle\frac{6}{5}\right)\]
小全音(10:9)大半音(16:15)
小半音(25:24)
\[\left(\displaystyle\frac{16}{15}\right)\times\left(\displaystyle\frac{25}{24}\right)=\left(\displaystyle\frac{10}{9}\right)\]
参考文献マックス・ウェーバー
音楽社会学 創文社 昭和42年

今日はここまでだ。数式を書くのすごく面倒なのよ。

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