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フルートの吹き方 音程(7)

音程については、「疑問・調整・妥協」によって決まると述べてきた。それは楽器製作の次元でもまったく同様なので、少なくとも正しい楽器の調整と、設計思想に沿った吹き方が求められる。きょうは、「それでもまだ音程の問題からは解放されない」だ。そう、「吹き方」だ。フルート吹きなら誰でも知っていることだが、フルートは「音程が悪い」楽器なのだ。しかし、思い出して欲しい。楽器の持ち方はどこか決められた数点で楽器を保持するのではなく、バランスで持つべきだと書いた。息取りは、息を吸うことを音楽表現の中に取り込もうと書いた。だから、音程の問題も、そのコントロールによって、私たちの音楽表現の輝かしさを、いっそう増すものとなるのではないか、と考える。

フルートに対して、私たちは息をどのように当てるかを考えてみよう。そこには様々な条件があって、それらはそれぞれが独立しているわけではないので、これをこうすればこのようになると結論付けることは難しい。例えば、「息をやや下に吹き込む」と、音程は下がる。しかし、これが、単に息の角度によってもたらされたのか、息を下に吹き込むためにフルートを内側に回転させたことにより、唇の息穴と歌口のエッジが近づいたからなのか、判別するのは難しい。さらに、この場合、倍音構造が変化して音色が変わるのだが、そのことが耳で感じる音程に影響を与えているだろう。また、管内に息をより多く吹き込むと、管からの抵抗も大きくなるので、息のスピードも落ちるかもしれない。このうちどれが、音程を下げさせる条件となったかを説明するのは難しい。演奏をしている上で、我々はしばしば音程を補正しなければならないが、「高いときはこうする」「低いときはこうする」といった、決め手になるような技術は無いと思っていたほうが良い。ある局面で音程が低すぎると感じたとしよう。補正するのに、楽器を外側に回すのか、息をやや前方に出すのか、息のスピードを上げるのか、さらに「倍音が多い音は高く聴こえる」事を利用するのか、解決法は様々だ。

ただ、注意点としていくつかを挙げることはできる。低い音域では下がり気味、高い音域では上がり気味。フォルテは上ずり、ピアノはぶら下がる、同様にクレシェンドは上ずり、ディミヌエンドはぶら下がる。フレーズの最後はぶら下がる。息のスピードを上げると音程は上がる。息の量を多くすると音程は上がる。楽器が温まれば音程は上がる。下を向けば音程は下がり、上を向けば音程は上がる。冗談で言っているわけではないぞ。楽譜にかじりついていると、楽譜の上下は30センチもあるのだから、当然上段と下段では姿勢が違ってくる。音程も変わってくるよ。

数回前に私は、音程を体温に例えた。興奮すれば上がり、落ち着けば下がる。高熱は確かに身体にダメージを与えるが、しかしその一方で、自身を守るために何かと戦っているのだ。ダメージを避けるために体温を下げるのか、戦うことを優先するのか。いずれにしても、機械で常に一定の体温を保つことなど、不健康極まりないだろう。何度も言うが、音楽も同じ、生きている。上ずり、ぶら下がる音程、どちらも負の要素ととらえずに、利用すれば私たちの音楽を、より強く輝かしいものにしてくれるはずだ。

ちょっと書き足りない気もするが、錦織君の試合が始まるから・・・

きょうはここまでだ。

フルートの吹き方 楽譜(1)

楽譜をいかに素早く読むかというのは、大方の関心事だと思う。つっかえ、つっかえ吹いていると、傍らの先生が露骨にイライラしてきて、聴こえるように溜息なんかつかれたりしてさ、月謝払ってるのこっちなのにな。皆、仕事もあるし、勉強もあるし、突発的な用事もできる、一日中フルート吹いていられるほどお気楽な身分の人はそうはいないだろうから、「練習不足」の一言で片づけられたら、溜息が出るのはこっちの方だ。あぁ、これだけで100いいね!獲得だろ?

「自分の吹いている所よりも、常に先の音符を見ていなさい!」って言われたことないか? そんなの無理だって。そんなことしようとしたら、頭のCPUほとんど使っちゃうから、馬鹿みたいに疲れるぞ。それに楽しくないしな。楽譜が素早く読めない人の特徴は、オタマジャクシの頭を順番に読んでいこうとするんだな。それで、速い、細かい音符を読んでいったら、凄い動体視力が必要だ。フルートより野球のほうが合ってるな。「楽譜の速読ソフト」なんてのをチラッと見かけたことがあるが、〇の役にも立たたんぞ、止めとけ。

朗読を考えてみようか。すらすらと、流れるように朗読するためには何が必要か。文字を一個一個読んで、発音していったらアウトだろ?最低でも単語単位、出来れば文節単位で認識する事ができれば、かなりすらすらと朗読できる。さらに、その時に個々の単語の意味、文全体の意味が把握できれば、色々な読み方もできる。NHKのアナウンサー風とか、悲しそうにとか、思いっきりく臭ぁく、演技を付けて朗読することもできる。だから、全部ひらがなで書かれると物凄く難しくなる。ま、楽譜はその状態だと思ってくれ。

で、やっと、楽譜はどう読むんだという話だ。「楽譜は、音符の”かたまり”を読め」だな。そんなに楽譜に近づかないで、いくつかの音符の塊りを一度に認識するんだ。それしか無い。この時注意してほしいのは、小節単位で塊を認識するのではなく、あくまでも「意味のある塊」を単位にするんだ。多くの人は小節線に騙される。そこに大きな節目があるように見えるからね。しかし、小節線には音楽上のたいした意味はない。小節線を超えるときに負荷がかかってはいけない。それから、「意味のあるかたまり」なんだから、スラーやスタカートなども含めて認識してしまうんだ、言葉のようにね。

では、その「意味のある塊」とはどんなことか。例えば、「ここからここまでは〇調の音階」「ここからここまでは半音階」「~アルペジオ」「~定型的な終止形」そんな風なとらえ方だ。難しいと思うかもしれないが、それ以外にない、だから、経験によって楽譜は読めるようになる。

どんな経験をすればより効果的か。次回、もっと詳しく書くが、音階練習、アルペジオなどの練習だ。音階練習というと、「指を回す為の練習と思っている人が多いが、絶対違う。だからタファネル&ゴーベールなんか、あんまり良くない、あれ、音階練習じゃないな。あれじゃ、音階身につかない。今、自分の吹いている曲が、「何調で書かれている」のか、位は最低限分かっていなきゃならんぞ。「今、何調か」が分かればもっといいが、その前に冒頭の調号だけはちゃんと読めよ。

きょうはここまでだ。

フルートの吹き方 楽譜(2)

昔、ハンス・ペーター・シュミッツ博士のクラスにいた頃、何人かで初見大会をやったことがある。誰もやったことのないようなエチュードを引っ張り出してきて、最長不倒距離を競うわけだ。この時の結果から導かれたのは、「こなしてきたエチュードの量に比例する」だった。初見が利くからと言って、何か自慢できることでもない。強いて利点を挙げれば、ゆっくりから始める曲の練習のスタート地点のテンポを、いくらか速めに設定できるというくらいだろうか。プロになれば、仕事でそれなりの初見能力を必要とする場面に出っくわすことも多いのだが、初見での演奏なんて、所詮演奏しっぱなしの薄っぺらなものでしかない。音楽的な価値はもっと崇高なものであって欲しい。何度も言うが、音楽的な価値という点において、プロもアマも違いはない。プロにはより重大な責任があるという事だけだ。

さて、昨日少しだけ触れておいた「音符のかたまり」だが、それを認識するには、初歩的な楽典の知識も必要になってくる。音階練習やアルペジオの練習ををやるにしても、調号と調名、主音、属音(音階の主音から5度上の音)、下属音(音階の主音から5度下の音)、できれば7度の音までサッと言えるようだと素晴らしい。これらは頻繁に出てくる。転調されたときにもこれらは有効に作用する。記号として書かれた装飾音だけではなく、音符として書かれた装飾の形を読み取る能力もあったら楽だろう。それらの知識があると、臨時記号に素早く対処できる。ある臨時記号が、「転調された」からなのか、あるいは「単純に経過音や装飾音として半音上(下)を出させたい」だけなのかを読み取れれば、臨時記号なんか怖くない。ただ、書かれたとおりの#、♭、♮ひとつずつに忠実に反応していたら、ダブルシャープやダブルフラットになると、もうお手上げになってしまうだろう。

音階練習は、例えば一日にひとつの調で、上り下りを全音域でゆっくりやるのが良いだろう。何年か続けると、主音、あるいは調号を思い浮かべるだけで指が勝手に音階通りに動いてくれるようになる。全部の調だ。半音階は、3つずつ4つずつの区切りで、12音全てのスタート地点で練習するとよい。さらに、あまり行われていないようだが、減七の和音の練習はやっておくべきだと思う。減七とは、全ての音程差が短三度になる4つの音からなる和音で、c-es-fis-a(ド・ミ♭・ファ#・ラ)と、cis-e-g-b(ド#・ミ・ソ・シ♭)と、d-f-as-h(レ・ファ・ラ♭・シ)の3種類しか存在しない(あとは展開型で同じ)。12の調があるにもかかわらず、3種類しかないのだから、臨時記号を伴って物凄く頻繁に登場する。でも、3種類しかないのだからやっておけばとってもお得だ。皆の好きな、ケーラーのエチュードには山のように出てくるぞ。

これらを全部を毎日やろうと思わないでくれ。せいぜい30分もやれば充分だ。それより、日頃からごく簡単なアナリーゼの習慣をつけておくのが良い。難しいことを言っているようで気が引けるが、それが最も楽譜を苦手にしない方法だ。それをするのとしないのとでは、同じエチュードを練習していても、その効果がはっきり表れる。アナリーゼといっても正確じゃなくていい、自分勝手な解釈で構わないから、臨時記号などの意味を理解して吹くようにしたら良い結果を必ず生む。もし分らなかったら、先生にどんどん聞こうよ。それが先生の役目なんだから。

あれ?俺、たしか、練習大っ嫌いって、言ったような気がする・・・

きょうはここまでだ。

フルートの吹き方 楽譜(3)

昨日はちょっと難しかったな。すまん。だから今日はちょっとしたTIPだ。その前に、昨日の減七な。譜面の用意ができた。なるべく読みやすい臨時記号で書いた。それぞれを展開すれば、起点をどこにおいても同じ和音だ。

これをこんな風に練習すると良いんだが・・・親切に3種類書いといた。これ、自分で続きを書いてもいいが、覚えちゃう方が早いぞ。てっぺんは、4オクターブ目のC(ド)でいいだろう。この和音の響きは無調で、ちょっとエキゾチックだから、楽しいぞ。

起点C(ド)

起点Cis(ド#)

起点D(レ)

 

TIP-1 加線について。フルートは単旋律で、移調楽器でもないし、下に加線が無いから超・楽な楽器だな。それでも上の加線を、6本位までは読まなくちゃならん。ただ、人間が瞬間に認識できる数は4までというのを、どこかで読んだ。だから、昔は札を数えるとき4枚ずつ数えたらしい。生憎、そんな札なんか数えたこと無いけどな。で、加線4本はG(ソ)だ。その上に乗っかってりゃA(ラ)だ。これをまず覚えてしまうんだ。で、加線が多くて「えっ!」と思ったら、H(シ)だ。「うわっ!」と思ったらD(レ)だな。これ、結構、真面目に言ってるんだよ。

TIP-2 楽譜から離れろ。車の免許取りたてはやっぱり下手、で怖い。遠くが見えてないからな。慣れるにしたがって、視野が広がる。楽譜も同じだ。視野が広がれば、スラーがどう架かっているのか、次の息取り、休止符はどこなのか見えてくる。さらに、フレーズ、形式、曲の構成まで見えてくれば、余裕ってもんだ。ついでに言うとな、もっともっと離れると、一日の中での練習のあり方とか、フルート人生の中でのその曲の位置とか、自分の人生の中でのフルートの位置とかも見えてくるはずだ。これはいつか改めて書くことにする、哲学的なんでな。

TIP-3 あくまでも原則的にだが、ゆっくりの楽章は、全体がp(ピアノ)であり、活発な曲は全体がf(フォルテ)である。そして、p(f)で始まった曲はp(f)で終わる。曲の終わりが、消えるように終わるのか、吹き切って終わるのか、きちんと意識しておくんだぜィ。

TIP-4 独習者に多い間違い。自分がレッスンをしているから言う訳ではないが、独習は、薦めない。こうしてフルートの吹き方を書いていても、独習で良く吹けるようになるとは、正直思っていない。コンピュータみたいに、昨日や今日できた機械だと、使うだけなら独習でもいいかもしれない。洗練された教授法・メトードがあるわけじゃないから。でも、楽器は何百年という伝統の中で、音楽という芸術に貢献してきた。それなりの、学習方法が幾多の試行錯誤によって確立されてきた。それを利用するのは、単に合理的とか、手っ取り早いというだけでなく、楽器や、音楽に対する敬意の問題でもあると思う。
独習者に多い間違いを、楽譜関係だけに限って書くと
1:長い音符・休符の長さがテキトウ
2:小節線の上で音楽が止まる
3:スラーがテキトウ
4:拍の概念が曖昧(何音符を1拍に取るのか、あるいは今、1拍が何音符なのか)

これらは、第三者の耳を必要としており、本や、WEBでは決して解決できない問題だ、音楽だからな。

今日はここまでだ。

フルートの吹き方 息の取り方(1)

 「もっと肺活量があったらなぁ」とか、「吹いてて苦しいよぉ」とか思ったことないか? あれば、必見だ。

 まず、これだけは言っておきたい。生きてんだから、息くらい、堂々と吸おうじゃないの!コソコソ吸うことないのよ、何にも悪いことしてないんだから。息取りが目立っちゃう?それが問題。結論だけ先に言っておこう。音楽の中に「息を吸う」という要素が含まれていないから、目立つんだよ。息取りという行為、そのために取る時間や、あるいは息を吸っている姿そのもの、それらを全て音楽表現の中に、プラスの要素として取り入れれば、息を吸うというのは素晴らしい表現手段のひとつになるのではないか? だってさぁ、普段から「吸って、吐いて」してるよな、生きてんだもの。循環呼吸とか、カンニングブレスとかっていうう言葉を聞くとゾッとするんだ私は。息を吸うのがそんなに恥ずかしいか!と、言いたくなるな。だから、普段と同じようにフルートを吹いている時でも、息を吸うのと吐くのは等価であるとしておこう。決して、きれいごとを言ってるんじゃないぞ、具体的にどうするかは、追々述べる。

 もうひとつ、苦しいって?それな、息が足りないんじゃないぞ。ひとつ実験だ。息を思いっきり吸って、肺を一杯にして、そこで止めてみようか。何秒持つ?いいよ、計らんでも、大体の感覚をつかんでくれ。次に、息を吐き切って止めてみようか。どうだ?な、こっちの方が長持ちするし、楽だろ? で、フルート吹いてて苦しいとしたら、どっちの苦しさだ?ま、ほとんどの場合吸って止めた時の苦しさが近いと思うぞ。今度はフルートを吹くときのように息を吸ってから、口を押さえて息出してみな。息出ない!苦しい!になるだろ? 確かに、腹式呼吸とか胸式呼吸とか、関係無くは無い。無くは無いか、難しいな、要はあるってこった。ただし、横隔膜の無い人間は居ないし、胸骨を広げたら、肺は膨らむんだし、話は「はい、解っかりましたぁ!腹式でやりまぁす!」みたいな単純な問題じゃない。こための具体策も追々述べる。

 そういいうわけで、フルート吹いてその音色を楽しむんなら、同じように、息を吸うことも楽しもうじゃないの。少し、気分が楽になったろ?これだけで、だいぶ楽に吹けるそ。

 きょうは問題提起だけにしておくわ。最後にこんな実験してみようか。立った状態から、しゃがみ込みながら息を吸ってみてくれ。その逆に、しゃがんだ状態から立ち上がる過程で息を吸ってみてくれ。な? 息取りって、そういうことよ。

きょうはここまでだ。

フルートの吹き方 息の取り方(2)

「息取りって、そういうことよ。」ってのは、つまり、息を取るという動作は、「体が上に伸びる動作」と結びついている、ということだな。西洋音楽は、上下動の音楽、ま、踊りもそうだな。この、音楽上の上下動と、呼吸による上下動をうまくかみ合うように息を取るのが、最重要だ。西洋音楽と断りを入れたのは、例えば能だ。移動するときに、上下動を極力抑える。歩行による腰の上下を、膝で吸収する、だから、頭は上下しない。聞くところによると、中国の京劇も同じらしいな。ちょっと、話がそれるが、能の静止の姿勢は、ただ、がしっと動かないようにするんじゃなくて、前に行く力と、後ろへ引く力のバランスで静止する。これ、フルートの持ち方で「究極の安定はバランスだ」と言ったのと、ほぼ同じ考えだ。で、話を元に戻すけど、上下動を嫌う能で、呼吸をどうコントロールしているかは勉強不足で知らない。誰か知ってたら教えてくれ。

音楽上の上下動についてちょっと説明をしておく。1拍目はダウンで、ほぼ間違いない。(ほぼ、というのは例えばヘミオラの場合、2小節で3拍なので、2小節目の1拍目はダウンじゃない、ヘミオラの説明してると長くなるから、ググってみてくれ)同様に、明らかなアップは、アウフタクトだ。いや、「アウフタクト」ってドイツ語で「上向きの拍」って、そのものの意味だから。とりあえず、小節の最終拍としておいて間違いないだろう。ここで、注意しなければならないのは、表記される拍子、例えば4分の3とか、4分の4とか・・それによって、最終拍が決まっているわけではないということ。それは1小節をいくつに「とる」かによって決まってくる。4分の4を4つにとるのか、2つにとるのかによって、最終拍の位置は違ってくる。だから、音楽上の上下動は、拍節感によって変化する。指揮者が、4拍子を4つに振らずに、2つに振る事があるのは、単に省エネで楽しているわけじゃないのね。音楽が変わってくる、(と、少なくとも指揮者は思っているはず)。で、最終拍が持ち上がって、持ち上がってそこにあるのが小節線。だから、ここでは普通、息取れないのよ。よく、重心を下げて吹くなんて書いてる人がいるけど、それは、「重心高いままだと息取れないから」ってんなら、まあ正しいかも。ねぇ、重心上がったり下がったりした方が楽しいんじゃないか?音楽だもの。上下しなけりゃ踊れねぇじゃん。

息の取り方を書こうと思って、きょうはひとつだけ例を挙げた。まとめれば、音楽の上下動と、息取りの動作がかみ合うように息を取りましょうねってこと。しかし、息取りというのは、この例でも分かる通り、別の要素、拍節感なんかと密接に結びついている。決して、物理的、肉体的に説明しきれるものではないということを理解してくれ。

指揮の話をしたんでちょっと言っておきたいことがあるんだ。よく、指揮者の棒で、「はぁい、タクトが一番下に来た時に音を出しましょね!」なんて、言ってるよな。そんな難しいこと、皆よくできるな。感心するぜ。でもな、こんな風にしてみてくれ。フルート構えて音を出す用意しておく。誰かに、何か軽すぎないもの、鍵束なんかいいかな、ぽお~んと軽く下手投げでちょっと上向きに投げてもらうんだ。その鍵束が、床に着くと同時に音出してみようか。イェーイ!簡単だろ?つまりな、最下点を認識するためには、投げる瞬間の鍵束の初速、角度、床までの距離を認識しなけりゃならないのよ。だから、それがわかるようにタクトを振らなきゃならないんだ、指揮者は。いい加減な初速や角度から振ったり、いきなり上から振り下ろして、「合わねぇっ」て言ってる指揮者は、皆で相談してクビにしてもいいぞ。そういう風に振れないってのは、リズム感無いってことだから。最近の電子メトロノームも実は最悪なんだな。ピッだけだもん。使わないわけにはいかないんで、しかし、慣れるまで慎重にした方がいい。昔の振り子式は、振り子見てりゃ物理的な予測がつくし、リズムという「動き」を含んだ概念に合ってる。

難しくなっちまった。許してくれ。

きょうはここまでだ。

フルートの吹き方 息の取り方(3)

昨日はちょいと散漫な文章を書いてしまった。勘弁してくれ。つまりは、アウフタクトの後で息取れませんよ。小節線の上で息取れませんよということだな。あ、2行くらいで書けたな。

きょうは、一転して、じゃぁ、どこで取れるのかという、ものずごぉく俗な話だ。恥ずかしいし、企業秘密を含んでいるので、24時間で消す。
1)フレーズの終わったところ
2)長い音符の後
3)同音反復の間
4)同型反復の間
5)順次進行よりは跳躍の間
6)旋律線の山・谷の、谷の直後

個別の説明に入る前に、三つばかり、お約束な。
ひとつ ・・・楽譜に印刷されている息取り記号を信用するな!
ふたつ ・・・先生が「そこで息をとっても良い」と言ったからって、考えもせずに一生そこで息を取ろうと思っちゃだめよ!
みっつ ・・・リズムは鼓動だ、(息取りのために)止まったら、死ぬ!

1)フレーズの終わったところ。
これ、当たり前体操ね。これは、取れるというよりは、取らなきゃダメという所だな、たとえ息が充分にあってもだ。

2)長い音符の後。
ま、これもあたりめぇだな。息取りに必要な時間は、前の音符のお尻を削るしかないからな。

3)同じ高さの音が続く場合、その間。短い息取りになるけど、慌てずにな。方法は後で述べる。

4)同型反復。いくつかの音符によって作られる同じ音型が繰り返される場合だ。ゼクエンツァ(Sequenza)とも言うな。同じ音型であれば、音の高さは変わっていても良い。その、音型の繰り返しの間だ。ま、同音型であるということを示すために、若干「意味ありげに」吹くわけだが、その時に取れるよって話だ。いま、「意味ありげ」って書いたが、結構重要なんだな。ドイツ語でいうと”deutlich”。レッスンではほんとに多用される単語だ。日本語訳は「はっきりと」と訳されることが多いんだが、ちょっと違うんだよなぁ。語源は”deuten”という動詞で、これは、「示す」「指示する」みたいな意味だ。これの形容詞。英訳すると、”clear”か、”distinct”なんだが、この場合、”distinct”が合ってる。「他のものと明確な違いを示す」ってな意味だな。「意味ありげ」ってのは、そういうことだ。

5)順次進行よりは跳躍の間。
基本的に、Allegro、Vivace、Prestoなどのテンポを早めにとる曲の中では、音符は短めに(スタカート気味に)演奏される。これ常識。しかし、それでも、通常、順次進行や、半音階等はスラーをつけて演奏されることが多い。(たとえ、バロック期のソナタなどで、スラーが書かれていなくても)だから、あるひとつのフレーズの中では、順次進行よりは跳躍の間のほうが取り易い。もちろん、順次進行であっても、フレーズの切れ目では息を取るべき。

6)旋律線の山・谷の、谷の直後。
これ、覚えとくと、得よ。旋律線っていうのは、まあ行ってみれば、音符を折れ線グラフみたいに繋いだ線だな。これの、谷底の直後というのは息を取り易い。ただ、谷底と言っても、単純な一番下の音とは限らない。谷底に例えばモルデントがあったら、そのモルデントの直後だ。モルデントというのは、簡単に言うと、トリルの逆のように中心音から下への装飾だ。音型が下がってきたときに、着地する音を考えたらいい。メロディーは、しばしば行き過ぎて、地面に潜り込んでから着地するからな。

息取りの場所が分かったら、オーケーって言えないのが息取りの難しさだな。どうやって取るかも重要だし、上記6項目以外でも取らなきゃならない局面は沢山あるだろうし。
長くなるから、
きょうはここまでだ。
(24時間で消さないよ、安心しろ!)

フルートの吹き方 息の取り方(4)

もし、肺活量が8000位あって、なぁ~んも考えなくても、いつでも次の休止符まで吹けちゃってさ・・・そういうの、「才能」だと思うか? 羨ましいか? もし、人よりも肺活量が少なくて、息取りも人より沢山必要だ、う~ん、どうしよう? どこで取ろう? どうやって取ろう? って、いつも考えなくちゃならん・・・でもな、10年たったら、絶対、こっちの方が音楽の高みに達していていると思うな。それが「才能」だと思うよ、私は。「考える」、「解決方法を見つける」、それこそ「人間が生きる」ってことで、「音楽する」って事だから。例えば、指が回らなかったら、その理由を考える。あらゆる理由を考えるんだ。持ち方、吹き方、姿勢・・・。ついでに言っとくと、じゃ、それでも「指が回らなかった」らどうするか。答えは簡単「人の3倍さらう」だ。その覚悟を決める。覚悟決めれば楽よ。でもな、それは大変な覚悟になるはずだから、安易に決めないほうがいいな。だから、まず、とことん考えようぜ。

「音大を受験したいんですけど、一日どのくらい練習したらいいですか?」 なんて、ネットのQAサイトなんかでよく目にするけど、皆、適当だよな。「最低毎日5~6時間、部活はダメ」とか答えてるの見て、「おいおい、止めとけよ、子供いびるのは」って思うな。まぁ、質問の内容自体、「違うんじゃね?」とも思うけどさ、もし私が答えるとしたら、「1日24時間フルートの事を考えていなさい、練習は、時間があったら、好きなだけやりなさい、嫌になったら即止めなさい」だな。何を隠そう、私、昔っから練習だいっっっ嫌い。ほんとに嫌い。だから、フルート持たずに「どうやったら練習しないでうまく吹けるようになるか」ばっか、考えてるのよ、今でも。だから逆に、練習する時は「あぁ、やだな」とはあんまり思わない。ですから、皆さん!「練習しなくちゃ」という強迫観念は捨てましょう。そんなこと考えてるから「あぁ、今日も練習できなかった」とか、「時間が無い!」なんて、面白くない気持ちになるの。仕事しながら、授業中、あるいは電車の中で「今度フルートを持ったら、ああいう風に吹いてみよう」、とか「あそこはこうしてみよう」とか、考えるだけで絶対上手くなるって。

ああ、息取りね。ちょっとこんな事してみようか。ため息をついてくれ。しょっちゅうやってるから得意だろ?ため息ついた後の肺の状態を、ニュートラルの状態としておこうか。さぁ、そこからさらに息を吐いてみてくれ。結構、息、残ってるよな。どんどん吐くと、お腹に力入ってくるよな。もう吐けないってところまで吐いたら、すっとお腹の力を抜いてみようか。自然に空気入ってくるよな。そしたら、そのままの流れで一杯まで息吸おうか。はい、出来上がりよ。何式呼吸でもいいの!それができれば。そして、肝心なのは、そのニュートラルのあたりが一番呼吸のコントロールがし易いんじゃなかという事。だから、いつも目一杯吸う必要無いのよ。だいたい、息、吸う量と吐く量、同じにしとかないとそのうち死ぬよ。そういうわけで、基準は常にニュートラルの状態に置いておこうね。

で、もうひとつの息取り方法。今述べたように、次の息取りまでの息だけ吸えばいいんだから、あんまり忙しくないスタカートの連続の場合、毎回息を取るとすれば、ニュートラルの状態から音1個分の息だけ吸えばいいわけだ。そうなると、わずかの息の出し入れの技術が必要だよな、「目一杯吸って、足りなくなったらどこかで吸いましょ」の反対なんだ、実は。犬の真似してみようか。暑いとき口開けてハッ、ハッ、って息してるだろ。あれの真似。沢山吸わんでいいから、少しずつ早く繰り返せるように練習してみてくれ。途中でリズムが乱れたり、だんだん息の収支が合わなくなって苦しくなってきたら、うん、未熟だな。目一杯吸って、胸や喉で息止めて、小出しに息使ってると、苦しいよ。
この息取りの方法ができれば、かなり息取りの場所を増やせるぞ。アーティキュレーションを利用して息が取れる。ただし、息を吸った後に、アンブシュアが即出来上がらないとなかなか上手くいかない。だからぁ、唇に力入れすぎんな!ってことになるの。出てくる息の量とスピードに合わせて、アンブシュアを作ればいいの。アンブシュアを作って息を出すんじゃないのね。

やってみりゃ簡単なんだけど、書くとなんだか難しそうだな。
でも、きょうの練習は、夜中でもできるぞ。

きょうはここまでだ。

フルートの吹き方 息の取り方(5)

先日挙げた6項目の息取りポイントと、短い息取りの方法で、多くの問題は解決できると思うが、それでもまだ課題は残る。この残った課題こそ息取りで苦労するところなので、それを説明できないとインチキと言われてもしょうがないな。渋々説明する。

ドアに鍵、窓にカーテンな。たとえば、ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」冒頭、フルートのソロ。これ、旋律的には息をとるところ無くは無いのだが、長ぁいスラーが付いていて、しかも、世界中のオーケストラでみんな一息で吹いているから、もしスラーをぶっち切って息を取ろうもんなら、指さされて笑いものになる。こういうのは練習するっきゃない。必要なのは、息の倹約と、タンク満タン状態での息のコントロールだ。よく冒頭のCis(ド#)、短く吹いてごまかしてるけどな。練習するっきゃないのは、そうしてもらうしかないんで、そうじゃないヤツな。エチュード系の16分音符が連続しているのとか、19世紀ヴィルトーゾ系の曲みたいなヤツだ。まず、基本的にやっちゃいけないのは、小節線の上で、テンポ止めてヒュッと息取る方法。エチュード系でよくある、2小節ごとに小節線の上でヒュッなんてやっちゃいかんぞ、絶対に! 確かに、小節線の上で息を取らなきゃならないことはある。エチュード系なんて、十六分音符のまま再現部に突っ込んでいくのなんか当たり前だからな。こういう場合は、リタルダンドをする。音符の間隔を少しずつ広げていって空いた所で息を取る。アーティキュレーションと組み合わせればよりやり易くなるはずだ。この時も、できることならアウフタクトにとれる音列を見つけ出して、その直前で取れればかなり素敵だ。繰り返しておく。「テンポを止めるな」「息取りを音楽の中に取り込め」だ。

それでも取れないときはどうするか。俺って親切だろ?ヴィルトーゾ系なんかで、「カッコイイ場面でリタルダンドなんか出来ません!」って、怒るなよ、確かにそうだ。じゃぁどうする? 答えは、音を省くか、音形を変える。それしかない。こうするとなんか「負けた」感無いか?だから言ったでしょ、「楽譜通り」に拘るとロクな事ないよって。心配すんな、誰も吹けないような書き方してある曲、山のようにあるから。変に誤魔化そうとして、聴いている人に違和感を感じさせてしまうより、そのスピード感なり、躍動感を感じてもらうほうが目的にかなってる。奏者がいくら全部の書かれている音を吹こうが、それだけで誰かが褒めてくれるわけじゃないもん。それでも、音全部吹かないと、作曲家に申し訳が立たんという場合は、しょうがねぇからこうしろ。皆さん大好きなカルメンファンタジーから、譜例挙げとく。注意してほしいのは、旋律線の谷底の直後であり(谷底はGis-ソ#)、それに続くA-ラへの装飾音E-Fis-Gis(ミ-ファ#-ソ)が、アウフタクトのように取れる地点で、細工が行われているところだ。この譜面、印刷で無責任な息取りマークが付いてる、これ、鵜呑みにしてこのままやろうとしたら、曲止まるか、しゃっくりみたいな息取りになるよな。息取り直前のGisなんか、まともに鳴らないだろ?

ひとつ大事なことを忘れていた。すまん。「長い音符の後だけど、息を取らないほうが良い」場合だ。その続きで「それでも、どうしても取りたいんだ!」場合の処理方法だ。明日にしようっと。

きょうの結論は、聴く人ファースト!だ。作曲家ファーストでも、俺様ファーストでもないの。

きょうはここまでだ。

フルートの吹き方 息の取り方(6)

きょうは、ちょっと難しい話になるかも。昨日予告しておいた、長い音符の後でも息を取らないほうが良い場合だ。まず譜例を挙げておく。

ヘンデル(Händel)のフルートと通奏低音のためののソナタ・ロ短調(h-moll)、第1楽章Largo冒頭。1小節目の最後のfis(ファ#)から4小節目のais(ラ#)まで一息で吹けるんなら、それでいい、さいなら。まず、スラーを考えてみようか。第1小節目にヘンデルが自分でスラーを書いてる。ちなみに、ヘンデルの書いたスラーはこの楽章であと3か所しかない。いずれも装飾の音型をひとまとめにして付けている。じゃぁ、後は全部スラー付けないんですか?という疑問は当然湧いてくるな。この辺の詳しいことは機会を改めて書くことにする、バロック期のソナタのそもそも論から始めないとならないからな。スラーは、装飾のひとつの方法であって、スラーでもなく、スタカートでもない、つまり、装飾を施してない旋律というのは、きわめて例外と思っておいて欲しい。だから、この楽章がLargoという比較的ゆっくりに演奏される楽章であることを考えあわせると、スラーはどんどん付けたほうが良い。参考までに、スラーを付けてみた。

2小節目の最初のスラーはプララー(のような装飾)、二つ目のスラーはモルデントという解釈だ。ふたつを合わせた装飾と解釈すればcis(ド#)からcis(ド#)までをひとつのスラーにしてもいい。さて問題は次だ。2小節目の3拍目、3小節目の1拍目、同じく3拍目、そして4小節目の1拍目で、d-cis-h-ais(レ・ド#・シ・ラ#)という美しい下降音型がある。十六分音符はその下降に逆行したこれまた素敵な装飾だ。この装飾は長い音符からタイで続き、弱拍から始まる順次進行だな。こういった場合、スラーは分けない方が素敵だ。(やってみ?)はい、見事に息取りポイント無くなりました!で、こうやってもいいんだが、

どうも、息取りの後の短い弱拍は、短すぎる傾向があり、しかも順次進行だと目立って、尖がって聞こえてしまう。「スラーは装飾として強調点に付けられ、原則的に頭にアクセントを置く」事からすると、折角の素敵な装飾を台無しにしてないか?

こうすると素敵になるぞ。

3小節目の1拍目の四分音符を2分割して、同音反復を作り出し、その間で息を取ることにした。これは、息取りのポイントを無理やり作り出したように見えるけれど、堂々と息を取れば立派な装飾になる。

どうだろうか?息取りも、立派な装飾に変化する可能性があるんじゃないだろうか。こんな例はしかし、実際山ほどあるし、個々の局面で様々な解釈も成り立つので、原則を示すわけにはいかない。ひとつの例として参考にしてくれ。

で、もうひとつ譜例を挙げておこう。J.S.Bach BWV1034 Ⅲ楽章、息取りの難しい部分だ。

一見どこでも取れそうだが・・・

どうだろうか?

 

ああ、今日は疲れた!

きょうはここまでだ。