ひとやすみ(1) 2×エピソード

エピソード(1)・・・ラーメン、喰えってか?

ドイツで勉強をしていたころ、日本の某T〇Sテレビの、ロケのコーディネータ兼通訳のちょっとしたアルバイトをしたことがある。仕事のできないDirectorちゃんでな。もう日本を出るときから頭の中に絵が出来ちゃってる感じで、なんともやりがいの無い仕事だった。ま、そんなことはどうでもいいんだが、このD.ちゃんが曰く「クラシックをやるなら演歌も聴かなくちゃダメですよ。」だって。あきれ返って、なんと返事したか覚えてないね。かろうじて「ふん」と答えたかどうか。そりゃ聴くこともあるわな、普通に。JAZZは好きだし。でも、ろくにクラシックを知らないアンタが「聴かなきゃダメ」って言う根拠は何なの? まぁ、「クラシック馬鹿」みたいな表現もあったから、多分そのことを言ったんだろうけどね。それまでの会話の中に、「クラシック最高!」なんて、俺、一言も言ってないし。フランス料理の修行をしにパリへ来たんだっていう料理人に、「ラーメン喰わなきゃダメよ」って言うか? 肉にされるぞ。反論はしなかったけど、腹の中ではそう思ってた。さて、諸君! 俺を傲慢だ、鼻持ちならん、生意気だと思う方もおられよう。じゃ、次のエピソードだ。

エピソード(2)・・・シュミッツ博士、激怒!

ハンス・ペーター・シュミッツ博士のクラスにいた頃の出来事だ。ドイツ人の学生4人が、冗談半分にストリートパフォーマンスをした。一応、ホッホシューレの学生だから、そりゃ上手いよ。拍手喝采、結構儲かったって話を彼等から聞いた。で、それがどういうわけか、シュミッツ博士の耳に入った。シュミッツ博士、激怒!!! 「私はそんな事のために、あなた達に教えている訳ではない」だ。あんなに怒ったの知らない。博士は明らかに、「自分の教えている音楽」を高い位置に置いていた。自分の教えている音楽が、街の道端で演奏されることを許さなかった。このある種のエリート主義と言おうか、誇り高きアカデミズムと言おうか、そんな矜持を博士は崩すことはなかった。「世の中で主導的役割を果たせ」とも言った。

アカデミズムやエリート主義が、まるで悪のように言われて久しい。下へ降りることばかりが善のように扱われる。伝統を守りつつ、世の中を発展させていく責任は、いったい誰が持っているのか。いや、その責任を自覚しているのは、いったい誰なのかだ。

ふたつのエピソードを書いてみた。これ、順番を逆にしたら、きっと印象が違ったと思う。

あ、俺、ラーメン好きだから。自分で麺を打って、週に5日は喰う。
きょうはここまでだ。