フルートの吹き方 練習(4)

「基礎練習」って言葉が大嫌い。語感が、何か退屈なことを我慢してやらなきゃならんような、嫌な響きだ。サッカー部で腕立て伏せ100回とか言われている感じだ。もし頭の中で「何これ、無駄じゃん」って思ってたら、やらぬがよろし。意味が理解できていて、やってて楽しければ、それはきっと役に立つ。そこで、いわゆる「基礎練習」にはどんなものがあるのか、そしてその要点について書いてみようと思う。

まず、ロングトーンだ。誰でも言う、「ロングトーンが、音色向上の役に立つ」って。それほんとかよ? 確かに、ロングトーンをやって、音色が悪くなることは無いだろう。でも、音色の向上の、目的で練習するなら、ロングトーンよりも効果的な練習法がある。あるいは、ロングトーンよりも前にやることがある、と言ってもいい。詳しくは、前に書いた「良い音を出すには(1)~(7)」を読んで欲しい。

で、ロングトーンの本来の目的は「音のコントロール」だ。だから、クレシェンドとディミヌエンドを組み合わせたり、ビブラートの緩急を組み合わせたりする。例えばこんなやり方だ。あくまでも一例だからね。1オクターブ目のH(シ)でやる。音の出だしは雑音の全くない音で、ボリュームゼロからクレシェンド、消えるときも、ディミヌエンドしていって、雑音無しのボリュームゼロで終わる。例えばこれを、クレシェンドとディミヌエンドは同じ長さになるように。出来たらこの逆。そして、ビブラートの緩急を組み合わせてやってみる。緩-急-緩、急-緩-急と組み合わせれば、音1個で4種類のロングトーンだ。これ、ちゃんとやったらものすごく難しく、ものすごく疲れる。静かな場所と、研ぎ澄まされた神経が必要だ。ねぇ、毎回、毎回、練習の初めにベ~って伸ばしてるだけなら、そのやり方、考えたほうがいいよ。楽器があったまって、自分の吹き方になってきて、集中力が高まった、その時にやる。それも高いモチベーションの日だけやる。

ロングトーンとビブラートについては、とても重要なので、改めて項目を立てて書いていこうと思う。いずれにしても、練習は苦しくなったら止めようぜ。楽しくなかったら止めようぜ。そうすると、自分が何者かがだんだん解ってくるんだ。どんだけ、真面目で、どんだけ駄目かがね。そうしたら、工夫の余地が生まれる。そして自分だけの練習法が生み出せる。それが最強。教わった通りに、苦しい練習を5時間耐えられる奴よりも、4時間59分デートしちゃって、最後の1分反省する奴の方が俺は好きだな。いいよ、レッスンでそのデートの話聞いてやろうじゃないの。

基礎練習ってまだまだある。全部やったら3時間は必要なくらいある。少しずつご紹介しようと思う。毎日、決まったルーチンを繰り返せる人から見たら、馬鹿みたいな話ですまん。何回も練習嫌いだと宣言しているんだが、それでもやるときはやるんだよ。今まで、最高にやったのは一日14時間だ。8時間くらいやると、唇の力がうまい具合に抜けて、いい音がするんだ。楽しかったね。唇の力が抜けません!って言ってる人、イチかパチかでやってみるか?

きょうはここまでだ。