フルートの吹き方 楽譜(2)

昔、ハンス・ペーター・シュミッツ博士のクラスにいた頃、何人かで初見大会をやったことがある。誰もやったことのないようなエチュードを引っ張り出してきて、最長不倒距離を競うわけだ。この時の結果から導かれたのは、「こなしてきたエチュードの量に比例する」だった。初見が利くからと言って、何か自慢できることでもない。強いて利点を挙げれば、ゆっくりから始める曲の練習のスタート地点のテンポを、いくらか速めに設定できるというくらいだろうか。プロになれば、仕事でそれなりの初見能力を必要とする場面に出っくわすことも多いのだが、初見での演奏なんて、所詮演奏しっぱなしの薄っぺらなものでしかない。音楽的な価値はもっと崇高なものであって欲しい。何度も言うが、音楽的な価値という点において、プロもアマも違いはない。プロにはより重大な責任があるという事だけだ。

さて、昨日少しだけ触れておいた「音符のかたまり」だが、それを認識するには、初歩的な楽典の知識も必要になってくる。音階練習やアルペジオの練習ををやるにしても、調号と調名、主音、属音(音階の主音から5度上の音)、下属音(音階の主音から5度下の音)、できれば7度の音までサッと言えるようだと素晴らしい。これらは頻繁に出てくる。転調されたときにもこれらは有効に作用する。記号として書かれた装飾音だけではなく、音符として書かれた装飾の形を読み取る能力もあったら楽だろう。それらの知識があると、臨時記号に素早く対処できる。ある臨時記号が、「転調された」からなのか、あるいは「単純に経過音や装飾音として半音上(下)を出させたい」だけなのかを読み取れれば、臨時記号なんか怖くない。ただ、書かれたとおりの#、♭、♮ひとつずつに忠実に反応していたら、ダブルシャープやダブルフラットになると、もうお手上げになってしまうだろう。

音階練習は、例えば一日にひとつの調で、上り下りを全音域でゆっくりやるのが良いだろう。何年か続けると、主音、あるいは調号を思い浮かべるだけで指が勝手に音階通りに動いてくれるようになる。全部の調だ。半音階は、3つずつ4つずつの区切りで、12音全てのスタート地点で練習するとよい。さらに、あまり行われていないようだが、減七の和音の練習はやっておくべきだと思う。減七とは、全ての音程差が短三度になる4つの音からなる和音で、c-es-fis-a(ド・ミ♭・ファ#・ラ)と、cis-e-g-b(ド#・ミ・ソ・シ♭)と、d-f-as-h(レ・ファ・ラ♭・シ)の3種類しか存在しない(あとは展開型で同じ)。12の調があるにもかかわらず、3種類しかないのだから、臨時記号を伴って物凄く頻繁に登場する。でも、3種類しかないのだからやっておけばとってもお得だ。皆の好きな、ケーラーのエチュードには山のように出てくるぞ。

これらを全部を毎日やろうと思わないでくれ。せいぜい30分もやれば充分だ。それより、日頃からごく簡単なアナリーゼの習慣をつけておくのが良い。難しいことを言っているようで気が引けるが、それが最も楽譜を苦手にしない方法だ。それをするのとしないのとでは、同じエチュードを練習していても、その効果がはっきり表れる。アナリーゼといっても正確じゃなくていい、自分勝手な解釈で構わないから、臨時記号などの意味を理解して吹くようにしたら良い結果を必ず生む。もし分らなかったら、先生にどんどん聞こうよ。それが先生の役目なんだから。

あれ?俺、たしか、練習大っ嫌いって、言ったような気がする・・・

きょうはここまでだ。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です