フルートの吹き方 息の取り方(6)

きょうは、ちょっと難しい話になるかも。昨日予告しておいた、長い音符の後でも息を取らないほうが良い場合だ。まず譜例を挙げておく。

ヘンデル(Händel)のフルートと通奏低音のためののソナタ・ロ短調(h-moll)、第1楽章Largo冒頭。1小節目の最後のfis(ファ#)から4小節目のais(ラ#)まで一息で吹けるんなら、それでいい、さいなら。まず、スラーを考えてみようか。第1小節目にヘンデルが自分でスラーを書いてる。ちなみに、ヘンデルの書いたスラーはこの楽章であと3か所しかない。いずれも装飾の音型をひとまとめにして付けている。じゃぁ、後は全部スラー付けないんですか?という疑問は当然湧いてくるな。この辺の詳しいことは機会を改めて書くことにする、バロック期のソナタのそもそも論から始めないとならないからな。スラーは、装飾のひとつの方法であって、スラーでもなく、スタカートでもない、つまり、装飾を施してない旋律というのは、きわめて例外と思っておいて欲しい。だから、この楽章がLargoという比較的ゆっくりに演奏される楽章であることを考えあわせると、スラーはどんどん付けたほうが良い。参考までに、スラーを付けてみた。

2小節目の最初のスラーはプララー(のような装飾)、二つ目のスラーはモルデントという解釈だ。ふたつを合わせた装飾と解釈すればcis(ド#)からcis(ド#)までをひとつのスラーにしてもいい。さて問題は次だ。2小節目の3拍目、3小節目の1拍目、同じく3拍目、そして4小節目の1拍目で、d-cis-h-ais(レ・ド#・シ・ラ#)という美しい下降音型がある。十六分音符はその下降に逆行したこれまた素敵な装飾だ。この装飾は長い音符からタイで続き、弱拍から始まる順次進行だな。こういった場合、スラーは分けない方が素敵だ。(やってみ?)はい、見事に息取りポイント無くなりました!で、こうやってもいいんだが、

どうも、息取りの後の短い弱拍は、短すぎる傾向があり、しかも順次進行だと目立って、尖がって聞こえてしまう。「スラーは装飾として強調点に付けられ、原則的に頭にアクセントを置く」事からすると、折角の素敵な装飾を台無しにしてないか?

こうすると素敵になるぞ。

3小節目の1拍目の四分音符を2分割して、同音反復を作り出し、その間で息を取ることにした。これは、息取りのポイントを無理やり作り出したように見えるけれど、堂々と息を取れば立派な装飾になる。

どうだろうか?息取りも、立派な装飾に変化する可能性があるんじゃないだろうか。こんな例はしかし、実際山ほどあるし、個々の局面で様々な解釈も成り立つので、原則を示すわけにはいかない。ひとつの例として参考にしてくれ。

で、もうひとつ譜例を挙げておこう。J.S.Bach BWV1034 Ⅲ楽章、息取りの難しい部分だ。

一見どこでも取れそうだが・・・

どうだろうか?

 

ああ、今日は疲れた!

きょうはここまでだ。