フルートの吹き方 良い音を出すための持ち方(1)

 すまん。タイトルが長くて。持ち方というと、持ち方を変えれば、何とかこの回らん指が回るようになるんじゃないか、と考える人も居るだろうから、あえて、良い音を出すためのと、断りを入れておいた。指が回らない、あるいは回らないと感じる原因は、多くの場合、音が正確に出ていないことに起因する。音の立ち上がりが悪ければ、頭の中の音と実際に出た音との誤差を、私たちの脳のCPUは必死に補正する。そんなことが、2秒も続けばあっという間にCPUはパンクして、素っ転ぶね。跳躍のために、吹き方をガラッと変えなきゃならないとしたら、そこでも厄介なことが起きるだろうし、急激な音色の変化にもCPUは対応を始めるだろう。極論かもしれないが、音がちゃんと出てりゃ、指は誰だってよく回る。音が出てないのに指だけむちゃくちゃ回るやつも、居ないではないが、これ以上は黙っとこうか。

 3点支持とか、4点支持とかが、しばしば論じられているようだが、結論から言うと、はっきり言って「ばかばかしい」。3点支持ってのは、口と、左の人差し指と、右手の親指(胴体の手前を向こうに押すような位置)、4点支持ってのは、口と、左の人差し指と、右手の親指(胴体の下に位置する)と、右手の小指だ。一見科学的で、合理的だが、どちらも口を楽器の支持点と考えている時点で、アウトだと言っておく。確かに、口も、左の人差し指も、右の親指も、小指も支持点には成り得る。が、固定された支持点ではない。音の出し方のところで述べたように、唇は音域、強弱、音程、音色などに対応するために、複雑かつ微妙に変化しなくてはならない。当然、上唇も下唇もだ。その時、フルートが下唇に張り付いちまっていたら、もはや唇はほとんどコントロールできないんじゃないか?特に下唇は。

 じゃぁ、どうやって持つか。なんとなく持て、だな。究極の安定はバランスをとることによって得られる。綱渡りで、絶対落ちないように足と綱とを固定するとしたら、どんだけの装置が必要になる?長い棒を手にもって、左右のバランスを取りさえすれば、なんと簡単に安定することだろう。右に傾いたり、左に傾いたりするかもしれないが、足と綱とは安定的に接しているはずだ。この、足と綱との接点が、我々の口と、フルートの接点だ。ガシッと固定されていたら、ほんのわずかの傾きでも、転落だ。いや、あなたが、直立不動で、身動き無しに吹くんだったらそれでもいいが、それで音楽はできんだろう。

 次回は、具体的にどう持つかを解説するつもりだ。一つだけヒントを出しておこうかな。フルートの重心はどこ?だ。立っているあなたの重心じゃないぞ、そんなもんどこでも構わん。右や左にしょちゅう変わるのが極めて自然。人間だもの。しかし、フルートの重心は一定のはず、その重心の位置だ。

ま、これだけは覚えておいてくれ、
なんとなく持て、だ。
今日はここまでだ。